負う(読み)オウ

デジタル大辞泉 「負う」の意味・読み・例文・類語

お・う〔おふ〕【負う】

[動ワ五(ハ四)]
背中や肩にのせる。背負う。「重い荷を―・う」
身に受ける。また、自分で引き受ける。かぶる。「責任を―・う」「恨みを―・う」
傷を受ける。「重傷を―・う」「損害を―・う」
お陰をこうむる。「先輩のご指導に―・うところが大きい」
後ろに位置させる。背景とする。「後ろに山を―・う」
借金する。
「その人は、わがこがねを千両―・ひたる人なり」〈宇治拾遺・一〉
名としてもつ。名前に適合する。
「名にし―・はばいざ事とはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」〈伊勢・九〉
ふさわしいさまである。適応する。
文屋康秀ふんやのやすひでは、ことば巧みにて、そのさま身に―・はず」〈古今仮名序
[可能]おえる
[用法]おう・せおう――「負う」は文語的。話し言葉では多く「背負う」を使う。◇「負う」「背負う」には抽象的に負担する意味もあり、「責任を負う」「罪を負う」「一家を背負って働く」などと使われるが、「背負う」のほうが具体的動作を表す度合いが強い。傷・痛手については「負う」を用い、「背負う」は使わない。◇類似の語に「になう」「かつぐ」がある。ともに、肩で重みを受けるようにして物を運ぶ意。「大きな荷を担う」「おみこしを担ぐ」、また、抽象的に「役割を担う」「次代を担う」などとも使う。
[類語]担ぐ担う負ぶう背負う背負しょ引っ担ぐ担ぎ上げる負んぶ肩車

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精選版 日本国語大辞典 「負う」の意味・読み・例文・類語

お・うおふ【負】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ハ行四段活用 〙
    1. それにふさわしい様子である。似合っている。
      1. [初出の実例]「文屋の康秀は、ことばはたくみにて、そのさま身におはず」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
    2. ( 「名におう」の形で ) 名前に適合する。その名にふさわしくする。
      1. [初出の実例]「かくの如(ごと) 名に淤波(オハ)むと そらみつ 大和の国を 蜻蛉島(あきづしま)とふ」(出典古事記(712)下・歌謡)
      2. 「名にしおはばいざ事とはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」(出典:伊勢物語(10C前)九)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
    1. せなかに載せる。背負う。しょう。
      1. [初出の実例]「其の妻須世理毘売(すせりびめ)を負(おひ)て、〈略〉逃げ出でます時」(出典:古事記(712)上)
    2. 身に受ける。こうむる。引きうける。
      1. (イ) 傷害を身に受ける。
        1. [初出の実例]「いざ吾君(あぎ) 振熊(ふるくま)が 痛手淤波(オハ)ずは 鳰(にほ)鳥の 淡海(あふみ)の海に 潜(かづ)きせなわ」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. (ロ) 恨み、報いなどを身に受ける。
        1. [初出の実例]「大夫(ますらを)の思ひ侘びつつ度(たび)まねく嘆き嘆きを負(おは)ぬものかも」(出典:万葉集(8C後)四・六四六)
        2. 「恨みをおふつもりにやありけむ、いとあつしくなりゆき」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
      3. (ハ) 責任をひきかぶる。
        1. [初出の実例]「此の事は荒三位と云て藤原のと云ふ人ぞ、負(おひ)ける」(出典:今昔物語集(1120頃か)二九)
    3. 身にもつ。
      1. (イ) 負債など、悪い状態を身にもつ。
        1. [初出の実例]「ここに旅人来てやどらんとす。その人は、我金を千両をひたる人なり」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
        2. 「こうしたハンディキャップを負う人たちが」(出典:現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉IV )
      2. (ロ) 義務、責任をもつ。「責任を負う」
        1. [初出の実例]「自己の職分と父の贖罪と二重の義務を負(オ)んでるのだから」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉七)
      3. (ハ) ( 「…に負う」の形で ) そのことに原因する。影響を受ける。おかげをこうむる。
        1. [初出の実例]「吾人の時間に対する観念の源でも実は吾人の視覚に負ふ所が甚だ多い」(出典:物理学と感覚(1917)〈寺田寅彦〉)
    4. 後ろにする。背景にする。
      1. [初出の実例]「森を背後に負うた小山のやうな一構(ひとかまへ)」(出典:機動演習(1903)〈田口掬汀〉三)
    5. 名をもつ。その名を名のる。
      1. [初出の実例]「亦其の神の御名は、汝負(おひ)て仕へ奉れ」(出典:古事記(712)上)

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