日本大百科全書(ニッポニカ) 「財政統計」の意味・わかりやすい解説
財政統計
ざいせいとうけい
国および地方公共団体の行う一般行政活動や関連事業活動の実態を、収入・支出、資金運用、債権・債務、財産取得・処分などの諸側面について計数として表示したものに対する総称。日常の行政活動に関連して作成される業務統計が中心であることを特徴とする。
国、地方公共団体を通じて財政統計の主体となるものは一般財政活動に伴う予算・決算統計であり、それとの関連で国の投融資活動に伴う財政投融資統計、財政収入に関する租税統計、事業資金や一時資金に関する債務統計、保有資産状況を明らかにする財産統計などがある。
国家財政に関する予算・決算統計の内容は、その会計区分によって一般会計、特別会計、政府関係機関会計に分けられて計上される。一般会計は、治安、国防、外交、教育、社会保障など国の一般行政活動にかかわる収支を明らかにするものであり、特別会計は、主として国民経済あるいは国民福祉の見地から国が行う事業活動に伴う収支状況を示すものであり、一般会計と区別して管理・運営される。具体的には、国有林野事業、道路整備(現、社会資本整備)などの「事業」に関する特別会計、食糧管理(現、食料安定供給)、外国為替資金など「もの」の管理や需給調整を行う管理特別会計、厚生保険、国民年金(この二つの特別会計は2007年に年金特別会計として統合)などの保険特別会計、財政融資資金や産業投資(この二つの特別会計は2008年に財政投融資特別会計として統合)など社会資本整備関連の資金供給を目的とする融資特別会計、国債整理基金など特定の資金の出入りを整理するための整理特別会計の5種類の特別会計がある。なお、特別会計は大幅に統廃合が行われ、2004年に31あったものが2010年までに17に整理される。
また、政府関係機関会計は、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫など、それぞれ特別の法律により全額政府出資の法人として設立され、政府とは独立に活動する事業体に関して、その経理内容を明らかにするためのものである。
地方公共団体の予算・決算統計に関しては、国と同様に一般会計と特別会計とに区分されるが、全国で1800もの地方公共団体において、会計の対象とする範囲などが一律ではない。したがって、地方公共団体の財政統計は、普通会計と公営事業会計とに統一されて作成されている。ここで、普通会計は、地方公共団体の会計のうち、公営事業会計以外の会計、すなわち、一般会計と公営事業会計以外の特別会計をすべて一つの会計としてまとめて作成されたものである。公営事業会計は、地方公共団体が主として地域住民のために営む事業にかかわる会計をまとめたものである。この会計は、電気、ガス、上下水道、病院、市場などの事業にかかわる地方公営企業会計、競馬、自転車・モーターボート競走、宝くじなどの事業にかかわる収益事業会計、国民健康保険事業会計、老人保健医療事業会計など九つの事業会計に分かれている。
財政投融資統計は、民間資金では不十分な事業分野に対して国家的見地から国が行う投融資活動の内容を明らかにするものであり、その資金計画は毎年、政府予算案とともに発表され、一般に予算・決算統計に次いで注目されるものである。財政投融資の原資のおもなものは産業投資特別会計、財政融資資金、簡易保険資金、政府保証債等の4種類であるが、先の3種類は財政資金であるのに対して、最後のものは政府保証債・政府保証借入金の形で調達される民間資金である。これらを原資とした資金が国の特別会計、公庫、独立行政法人、政府出資会社などの事業活動に対して運用される。
これらの財政統計はそれぞれの分野に応じて個々に公表されるが、一般的な資料としては、財務省による『財政統計』『財政金融統計月報』、日本銀行による『金融経済統計月報』、総務省による『地方財政統計年報』などがある。
[高島 忠]