資本額を産出額で除した大きさをいい、資本産出高比率ともよばれる。この概念は個々の企業または産業レベルに関しても用いられるが、比較的利用度の高いのは経済全体についてであって、この場合には産出高は通常、国民所得(国内総生産等)の意味に解される。資本係数は、分母・分子に絶対水準がとられるか増加分がとられるかに応じて、平均資本係数と限界資本係数とに区別される。また、現実の資本額・産出高がとられるか、産出高1単位(または産出高1単位の増加分)を生み出すのに必要な資本額(またはその増加分)がとられるかに応じて、それぞれ現実資本係数、必要資本係数とよばれる。
成長理論の分野で先駆的な業績を残したR・F・ハロッドは、このような資本係数概念を用いることによって、資本主義経済の不安定性を論証しようとした。
いま現実の資本係数をCとすれば、現実の成長率Gは、G=s/Cと表すことができる。ただしsは貯蓄率である。他方、必要資本係数をCr(一定)、適正成長率(資本の完全稼働をちょうど許すに足るほどの所得の成長率)をGwとすれば、Gw=s/Crである。この二つの式から次のことがいえる。もしも現実の成長率Gが適正成長率Gwよりも大であるとすれば、必要資本係数Crは現実資本係数Cよりも大きくなり、資本不足の状態がおこる。このとき企業家は投資を増大させてこの不足を補おうとするものだと考えるならば、その投資増加はさらにGを高め、G、Gw間の乖離(かいり)をますます大きなものにしてしまう。逆に現実の成長率が適正成長率よりも小さい、すなわち現実資本係数が必要資本係数よりも大であれば、Gはますます縮小し、Gwから乖離してしまう。したがって成長率が一定の値をとりうるのは、現実資本係数が必要資本係数にたまたま合致したときに限られる。しかしその可能性はきわめて小さく、偶然に支配される。こうしてハロッドは経済の不安定性を論じたのであるが、この不安定性の問題は「ナイフ・エッジ問題」とよばれている。
ハロッドはまた、資本係数概念を技術進歩の分類にも用いた。ハロッドの意味での中立性基準は、利子率(利潤率)一定のもとで資本係数を不変のままにとどめる技術進歩によって求められ、資本係数を上昇させるものは労働節約的技術進歩、低下させるものは資本節約的技術進歩とよばれる。
[大塚勇一郎]
『R・F・ハロッド著、宮崎義一・浅野栄一訳『景気循環論』(1963・東洋経済新報社)』
資本ストック(資本の存在量)(K)と生産高ないし所得(Y)の比率(K/Y)のこと。資本-産出量比率,資本の産出係数ともいう。一定の生産物を生み出すためには生産要素の一つとして資本(たとえば機械,工場設備等)が必要とされるが,いま1単位の生産ないし所得を生み出すのにどれだけの資本ストックが必要とされるか,これを表すのが資本係数にほかならない。最も代表的な資本係数は国民経済全体についての係数,すなわち一国の総資本ストックをたとえば国民純生産で割ったものであるが,これはR.F.ハロッド,E.D.ドマーらによって展開された経済成長理論(ハロッド=ドマー的成長モデル)において重要な役割を果たすものである。とくに一国の貯蓄率を資本係数で割った比率は,経済が資本設備の完全利用を実現しながら成長していくために必要となる適正成長率と呼びうるものであることを示すことができる。こうした観点から日本を含めた多くの国で資本係数の計測が行われている。
→経済成長
執筆者:吉川 洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...
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