日本大百科全書(ニッポニカ) 「趨勢変動」の意味・わかりやすい解説
趨勢変動
すうせいへんどう
trend
ある現象の時間的な変化のようすを数量的に観察した一連の統計数値(=時系列データ)において、個々の数値の変動を貫く長期的な基本的変動方向のことで、傾向変動またはトレンドともよばれる。
経済現象(たとえばデパートの売上高とか国民総生産など)の時間的変化を観測して数量的に表現した一連の統計数値であるところの経済時系列について考えると、それらの数値の時間的変動は種々の要因によって引き起こされている。それらの要因を整理すると、一般に、4種に分類されることが知られている。すなわち、(1)天候不順とか戦争などの突然発生する事件によって影響される変動部分(不規則変動)、(2)中元・歳暮のような社会的慣習あるいは1年を通じての気温の変化のような自然現象など、ある一定周期をもって規則的に繰り返される要因に基づく変動部分(季節的変動)、(3)なんらかの経済的因果関係に基づいて上下の波動となって現れる変動部分(循環変動)、そして(4)社会的、経済的な構造の変化などに伴って生ずる長期的、基本的な変動部分、である。すなわち、観測されたままの統計数字の系列は、これらの4種の要因からくる変動部分が合成されてできているものと考えられ、その全体変動から、不規則変動、季節的変動、循環変動の3種の変動部分を除去したあとに残される部分が趨勢変動である。
この変動部分を全体の時系列変動から取り出す方法としては、直線や二次曲線、指数曲線、さらにはロジスティック曲線などの成長曲線を当てはめることや、原系列に移動平均法を適用することなどが行われる。
[高島 忠]