足跡石(読み)あしあといし

精選版 日本国語大辞典 「足跡石」の意味・読み・例文・類語

あしあと‐いし【足跡石】

  1. 〘 名詞 〙 人の足跡のようなくぼみのある石に関して、その由来を説明する伝説。また、その名。多く社寺境内村境にあり、祭場名残であるが、日本武尊(やまとたけるのみこと)弘法大師など著名人遺跡のように言い伝える。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「足跡石」の意味・わかりやすい解説

足跡石
あしあといし

足跡のようなくぼみのある石について、その由来を説く伝説。足形石ともいい、神霊が降臨した跡とか、歴史事実の記念として語られるが、もともとは祭りや供養の場であったと考えられている。長野市戸隠(とがくし)祖山の矢本(やもと)神社の祭祀(さいし)の対象となっている石は、昔、将軍平維茂(これもち)が鬼女を退治するとき、鬼女の行方がわからなくなって、大石に腰をかけて観音を念じたあと矢を放った。そして矢の方向に行って鬼女を退治したという伝説があって、そのときふんばった石に足跡ができたと伝えて、現在も祭りの中心になっている。それでここに矢本神社を祀(まつ)り、矢の落ちた所へは矢先八幡が祀ってある。同じく神仏の影向(ようごう)を伝える例として、愛知県蒲郡(がまごおり)市西浦の無量寺の境内に「弘法(こうぼう)大師の足跡石」がある。大師(空海)がこの寺から幡豆(はず)郡沖島弁天に向かう途中、海岸の岩に立って「わが巡錫(じゅんしゃく)の形見に足跡をとどむ」といわれ、草鞋(わらじ)の足跡を残されたという。長野県中野市松川の常楽寺には、弁慶の足跡石がある。弁慶がこの付近まできたとき、のどの渇きに苦しんで、傍らの石にかけて踏むと、そのくぼみから水が湧き出したという。現在でもその石のそばから少しずつ水が湧(わ)き出して湿っている。また一説に義経(よしつね)の足跡、義経の馬蹄(ばてい)の跡などともいう。馬蹄の跡という伝説も多く、神ないしは英雄、貴人の乗った馬の足跡である。

[丸山久子]

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世界大百科事典(旧版)内の足跡石の言及

【手形石】より

…ただし,すべての石が依代になるのではなく,手形石のように形状や色彩等に特色を持つ場合が対象になったようである。同種の伝説に,馬蹄石や足跡石がある。【戸塚 ひろみ】。…

※「足跡石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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