山本有三(ゆうぞう)の長編小説。第一部は1937年(昭和12)1月から6月まで『朝日新聞』に連載。その改稿『新篇(しんぺん)路傍の石』を翌年から『主婦之友』に連載したが、40年7月、軍部の圧力により中絶を余儀なくされ、未完のまま翌41年岩波書店刊。貧しいがひたむきで向学心の強い愛川吾一(あいかわごいち)が主人公。母の死後上京した彼は、小石のように踏みつけられ、蹴(け)られながら、印刷所の文選工として自立の道を模索していく。1人の少年の成長の過程をたどった教養小説で、作者の自伝的な要素ももつ作品。
[宗像和重]
『『路傍の石』(新潮文庫)』▽『『定本版 山本有三全集9』(1976・新潮社)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…これで劇壇に登場した有三は,問題提起から人間内部の心理的葛藤を描く《坂崎出羽守》(1921),《同志の人々》(1923)へと進む。ついで小説に転じ《生きとし生けるもの》(1926),《波》(1929),《女の一生》(1933),《真実一路》(1936),《路傍の石》(1941)など理想を求め向日的に生きる人々の姿を感動をこめて描いている。有三は文学活動のみならず,文学者の地位向上,明大文芸科創設,児童文学の向上(戦前の《日本少国民文庫》編集,戦後の少年雑誌《銀河》創刊などもふくめ)に貢献した。…
※「路傍の石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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