五大明王の一尊で南方に位置する。サンスクリット名はKuṇḍalī。煩悩や障害を取り除き,毘奈耶迦(びなやか)を払いのける力があるとされ,修法の中でこの尊の印や真言を用いたり,歓喜天法を行って功験があらわれない場合に歓喜天を責めるために軍荼利明王の修法を行うことがあるといわれる。日本に残る作例に,単独像はなく,胎蔵界曼荼羅の中か,あるいは五大明王の中の一尊として表現されている。胎蔵界曼荼羅に登場するのは,いずれも二臂像である。図像集《覚禅抄》には四面四臂像と一面八臂像が記されるが,現在知られている軍荼利明王像は,そのほとんどが一面八臂像である。1127年(大治2)の東寺の《五大明王像》(画像,国宝)を例にすると,一番上の左手に輪宝,右手に三鈷杵(さんこしよ),第2手は左手に三鈷鉤,右手は印を作る。第三手は,左手に三鈷戟(げき),右手は与願印を作る。残る手は,両腕を胸の前で交叉させて印を作る。左右の足下には,蓮華座が置かれ,右足で立ち,左足は膝を高く上げる。なお軍荼利明王の特色は,八本の手の上腕と手首と胸とに,蛇をからませることである。
執筆者:関口 正之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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