軍荼利明王(読み)ぐんだりみょうおう

精選版 日本国語大辞典 「軍荼利明王」の意味・読み・例文・類語

ぐんだり‐みょうおう ‥ミャウワウ【軍荼利明王】

(「軍荼利」はkuṇḍalī の音訳。甘露の意) 仏語密教でいう五大明王の一つで、南方に配される。その形像は、四面四臂、一面八臂など一定しないが、怒りの相を表わし、一切の阿修羅(あしゅら)悪鬼を折伏(しゃくぶく)し、甘露を以て衆生資益するという。金剛界曼荼羅では降三世会(ごうさんぜえ)に列する。軍荼利夜叉軍荼利夜叉明王。軍荼利。軍荼。
今昔(1120頃か)一四「後朝の法を行ひ給ふに、大(おほきなる)壇の上に軍荼利明王(ぐんだりみゃうわう)、踏て立給へり」

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デジタル大辞泉 「軍荼利明王」の意味・読み・例文・類語

ぐんだり‐みょうおう〔‐ミヤウワウ〕【軍荼利明王】

五大明王の一。南方に配される。ふつう一面三目八臂はっぴ武器を持ち、憤怒ふんぬの相をなし、蛇を瓔珞ようらくとする姿に表される。軍荼利夜叉明王。軍荼利夜叉。軍荼利。

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改訂新版 世界大百科事典 「軍荼利明王」の意味・わかりやすい解説

軍荼利明王 (ぐんだりみょうおう)

五大明王の一尊で南方に位置する。サンスクリット名はKuṇḍalī。煩悩や障害を取り除き,毘奈耶迦(びなやか)を払いのける力があるとされ,修法の中でこの尊の印や真言を用いたり,歓喜天法を行って功験があらわれない場合に歓喜天を責めるために軍荼利明王の修法を行うことがあるといわれる。日本に残る作例に,単独像はなく,胎蔵界曼荼羅の中か,あるいは五大明王の中の一尊として表現されている。胎蔵界曼荼羅に登場するのは,いずれも二臂像である。図像集覚禅抄》には四面四臂像と一面八臂像が記されるが,現在知られている軍荼利明王像は,そのほとんどが一面八臂像である。1127年(大治2)の東寺の《五大明王像》(画像,国宝)を例にすると,一番上の左手に輪宝,右手に三鈷杵(さんこしよ),第2手は左手に三鈷鉤,右手は印を作る。第三手は,左手に三鈷戟(げき),右手は与願印を作る。残る手は,両腕を胸の前で交叉させて印を作る。左右の足下には,蓮華座が置かれ,右足で立ち,左足は膝を高く上げる。なお軍荼利明王の特色は,八本の手の上腕と手首と胸とに,蛇をからませることである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「軍荼利明王」の意味・わかりやすい解説

軍荼利明王
ぐんだりみょうおう

五大明王の一尊で、南方に配置される。サンスクリット語のクンダリーKualīの音訳。7世紀中ごろの阿地瞿多(あじくた)訳『陀羅尼集経(だらにじっきょう)』に説かれ、軍荼利夜叉(やしゃ)、大咲(たいしょう)明王、吉利吉利明王とも別称。すべての障碍(しょうげ)すなわち毘奈耶迦(びなやか)を除去し、歓喜天(かんぎてん)を支配する形像は、醍醐寺(だいごじ)蔵の五大明王にみられるような一面八臂(はっぴ)の姿のほか、四面四臂などの異形がある。

[真鍋俊照]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軍荼利明王」の意味・わかりやすい解説

軍荼利明王
ぐんだりみょうおう

軍荼利はサンスクリット語 Kuṇḍalīの音写。五大明王の一つ。南の方角に配置される。瓶の中の平等性智の水を一般の人々の心に注いで,人々のなかによい性質を起し育成するという。軍荼利夜叉,大咲明王ともいう。四面四臂,一面八臂に造像されるが,手足に多くのへびが巻きついているのが特徴である。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「軍荼利明王」の解説

軍荼利明王 ぐんだりみょうおう

密教の明王。
宝生(ほうしょう)如来の化身として,悪敵をしりぞけ,甘露で生あるものをすくう。ふつう一面八臂(はっぴ)の忿怒(ふんぬ)相で,蛇が身体にまきつく姿をとる。京都の醍醐(だいご)寺,大覚寺の像が有名。五大明王のひとつで,南方を守護する。甘露軍荼利,吉利吉利(きりきり)明王とも。

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