農産物の生産・加工・販売や農業経営などを共同で行うために設立される法人。1962年(昭和37)の農業協同組合法および農地法の改正で設立が認められ、農業協同組合法第72条の8に基づいて設立される。3人以上の農民が発起人となり、定款の作成、役員の選出を行い、設立の登記をすることで成立する。農業生産活動の協業化や共同利用施設を設置することにより組合員の共同の利益を図ることを目的とする。つまり農事組合法人は営利法人と公益法人の中間的な性格の法人組織であり、一般に「中間法人」とよばれることもある。
農事組合法人には1号法人と2号法人の2種類がある。1号法人は機械施設などを共同で購入して利用したり、農作業を共同で行ったりする場合に設立される法人で、農地を取得することはできない。2号法人は農作業受託や農畜産物の製造・加工・販売などの農業経営を営む法人であり、農地法第2条の規定に基づき、農地を取得できる農業生産法人である。農事組合法人の組合員は1人1票の議決権をもつ。1号法人の組合員は農民のみである。2号法人の組合員には農民、農協、法人に農地を現物出資した農地保有合理化法人のほか取引先などの員外従事者もなることができるが、員外従事者は組合員の3分の1を超えてはならない。2013年(平成25)に成立した「農地中間管理事業の推進に関する法律」(平成25年法律第101号)に基づいて2014年から始まった農地集積バンク事業で、農事組合法人は耕作放棄地や農地の集約・大規模化の担い手として期待されている。
なお法人形態によって農業を営む農業法人には、農事組合法人のほか、会社法人がある。会社法人には、株式会社(公開会社でないもの)、合名会社、合資会社、合同会社があり、いずれも営利を目的とした営利法人である。会社法人は農地法第2条の規定に基づき、農地を取得できる農業生産法人に該当する。
[矢野 武 2015年1月20日]
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…これらの組織体が法人格をもつ必要性も認められ,1962年の農業協同組合法,農地法の改正が農業法人法制化の画期となった。農事組合法人(農業協同組合法による)や有限会社(有限会社法による)の形態をとる農業法人が多い。また家族経営の法人化も行われている。…
※「農事組合法人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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