農業生産法人(読み)ノウギョウセイサンホウジン

デジタル大辞泉 「農業生産法人」の意味・読み・例文・類語

のうぎょうせいさん‐ほうじん〔ノウゲフセイサンハフジン〕【農業生産法人】

農地の所有権賃借権が認められる農業法人農地法に定める一定要件を満たす農事組合法人・株式譲渡制度のある株式会社合名会社合資会社合同会社の5種がある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「農業生産法人」の意味・わかりやすい解説

農業生産法人
のうぎょうせいさんほうじん

農地の所有権、使用収益権を取得できる法人。法人の形態としては農事組合法人、合名会社、合資会社、有限会社の四つであったが、2000年(平成12)の農地法改正により、株式会社も認められた。農業生産法人として満たすべき要件は、以下のとおり。(1)主たる事業として農業を営むこと、(2)構成員(出資者)は農地の権利を提供した個人や法人の事業に常時従事する農業関係者が中心となって組織されていること、(3)業務執行役員の過半数が法人の事業に常時従事し、かつ、農作業に主として従事する構成員であること。

 日本の農業は戦後の農地解放以来、すべての農家が自立して経営を行う家族農業の仕組みが堅持されてきた。しかし、農業の担い手減少や自由化進展に伴う国際競争の激化などにより、効率化をはかるため生産面積を拡大できるよう制度改革することが必須となった。そこで、株式会社による農業が推進されるようになった。

 法人化で得られる利点としては、金融機関の融資が受けやすくなること、税制上の優遇措置が得られること、農地の取得支援を受けられることなどがあげられる。ただし、法人としての納税義務雇用者としての責任などが発生するほか、会社として個人と法人の収入・支出を分別し帳簿管理を正確に行う必要がある。

 2009年に農地売買について規制緩和が行われた際には、農業生産法人に限り株式会社などの法人であっても農地を売買できるようになった。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「農業生産法人」の意味・わかりやすい解説

農業生産法人【のうぎょうせいさんほうじん】

1962年の改正農地法等によって創設が認められた農業を行う会社で,農地の取得が認められている。いわゆる〈一戸一法人〉として自営農業を法人化している農家とは別。法人の形態は農事組合法人,合名会社,合資会社,有限会社の四つであったが,2000年の改正により株式会社も認められ,税制や融資などの面で優遇措置が講じられる。それまで個々の農家によって支えられてきた農業の共同化を進めることによって,規模拡大を図るのが法人制度導入の目的。 1992年,農林水産省が出した〈新しい食料・農業・農村政策の方向〉によって,農業生産の基盤を個人経営の農家から農業生産法人に移行させようとの動きはより顕著になり,農業とそれに付帯するもののみに限られていた法人の事業範囲は,1993年の農地法改正によって農畜産物の加工・貯蔵運搬・販売,農作業の委託などにも拡大された。また,法人の構成員の要件も緩和された。1998年9月,農林水産省は事業の一層の多角化を推進するとともに,農業生産法人に対する出資資格の制限を緩和し,その法人と取引する食品メーカー,外食産業,生協市町村などの出資を認める方針を打ち出した。 1997年現在の農業生産法人の数は4925(うち有限会社が3524,農事組合法人が1379,合資会社が18,合名会社が4),作目別では畜産33%,米麦作21%,果樹11%で,米麦作が増加傾向にある。2000年には約5600に増加している。法人化が促進されたことによって,農業以外の職に就いていた人が一般企業への就職と同じ感覚で就農するなどの新しい動きも現れ始めた。
→関連項目認定農業者農業法人

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

農業関連用語 「農業生産法人」の解説

農業生産法人

以下の要件を満たす法人をいう。
(1) 法人の形態は、農事組合法人、合名会社、合資会社、有限会社のいずれかであること。
(2) 事業については、農業及びこれに関連する事業並びにこれらに附帯する事業に限られること。
(3) 構成員(出資者)については、農地の権利を提供した個人や法人の事業に常時従事する者等農業関係者が中心に組織されていること。
(4) 業務執行役員については、その過半数が法人の事業に常時従事し、かつ、農作業に主として従事する構成員であること。

この農業生産法人の要件をすべて満たす法人で、農地を適正かつ効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められるものに対し、農地法(昭和27年法律第229号)に基づき農地等の権利取得の許可がなされることになる。(農地等の権利を取得できる法人は、原則として、農業生産法人の要件を満たすものに限られている。)
農業生産法人制度は、農業経営の協業化を助長することを目的として、昭和37年の農地法改正により創設され、農業構造、農業経営の変化等に対応して、その要件の見直しが行われてきたところである。

出典 農林水産省農業関連用語について 情報

知恵蔵 「農業生産法人」の解説

農業生産法人

農地を利用して生産を行う、法人資格のある農業事業体。1952年に制定された農地法の規制を受ける。形態要件、事業要件、構成員要件、役員要件を満たさなければならない。農業の担い手として期待を集めている。法人数は、90年代後半から有限会社を中心に伸びており、「2005年農業センサス」によると5612の事業体がある。形態要件としては農業協同組合法に規制される2号農事組合法人と、会社法に規制される持ち分会社(合名、合資、合同)及び株式会社(株式の譲渡制限のある株式会社と特定有限会社)であることが必要。事業要件とは主たる事業として農業を営むことであり、構成員要件としては、農地提供者、150日以上の法人農業従事者、農業関連団体のほか、法人事業に必要な物資または役務を継続的に提供する生協などが構成員として認められている。役員要件は、農外従事者の支配力を排除するために設けられている。

(池上甲一 近畿大学農学部教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「農業生産法人」の意味・わかりやすい解説

農業生産法人
のうぎょうせいさんほうじん

1962年に農地法と農業協同組合法の一部が改正され認可された法人で,共同化によって生産性の高い農業経営を目指し,実現しようとするもの。形態として農事組合法人持分会社などがある。経営規模の拡大によるコストの低減,投資の合理化,過剰投資の回避などに優れ,また税制や制度融資上の利点がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

農林水産関係用語集 「農業生産法人」の解説

農業生産法人

農地等の権利を取得できる法人のこと。
農地法では、農地等の権利を取得できる法人は、原則として、農業生産法人の要件を満たすものに限られている。

出典 農林水産省農林水産関係用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の農業生産法人の言及

【農業法人】より

…また家族経営の法人化も行われている。これらのうち,農地法が定める一定の要件をみたしている法人は,農地を所有したり貸借する資格をもち,農業生産法人とよばれる。1995年現在,農事組合法人数6720,そのうち農業生産法人の資格をもつもの1335,また農業生産法人の資格をもつ会社は,有限会社2797,合名会社4,合資会社14である。…

※「農業生産法人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」