日本映画。1954年(昭和29)作品。溝口健二(みぞぐちけんじ)監督。近松門左衛門の『大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)』を作家の川口松太郎が脚色したものをもとに依田義賢(よだよしかた)が脚本を執筆。大経師の妻おさん(香川京子(かがわきょうこ)、1931― )と手代の茂兵衛(長谷川一夫(はせがわかずお))は、不義をはたらいたと誤解されたことから家を抜け出し、二人の道行が始まる。身分の違いによる拘束を、男女の結び付きの強さに逆転させ、道行から処刑までの道程を清楚(せいそ)に、また凛然(りんぜん)と描き出して、格調の高い作品に仕上げ、近松の文芸が醸し出す世界を垣間(かいま)見せた。本作は、溝口が撮った西鶴による『西鶴一代女(さいかくいちだいおんな)』(1952)や上田秋成(うえだあきなり)による『雨月物語(うげつものがたり)』(1953)より戯曲性が強く、室内でのシーンが多い。宮川一夫(みやがわかずお)(1908―1999)カメラマンの撮影は、ローキートーン(暗い画調)による日本家屋の美的な陰影に妙味を見せ、テーマである封建制度の暗さも象徴する見事な画面となった。日本の伝統楽器を用いた早坂文雄(はやさかふみお)の音楽も画面を引き締める。屋根も含めてまるごと建てた家屋のセット、リアリズムによる人物の心理描写などには、溝口が日活時代に助監督についた田中栄三(たなかえいぞう)(1886―1968)監督の影響もみられ、溝口の演出スタイルが凝縮した作品である。
[千葉伸夫]
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