陸水を対象とする学問の総称。地球表面を陸と海とに大きく分けた場合、陸に存在する水域、すなわち陸地に囲まれた水域は陸水とよばれ、その大部分は淡水(真水)であるが、塩湖や海水と混合する汽水湖、河口域なども含めて陸水とよんでいる。その存在形態は多様で、恒常的な湖沼・河川や地下水のほか、一時的な水たまりや水田なども陸水域に含まれる。しかし、現在までのところ湖沼と河川が中心的な研究対象となっている。水質や水の動きなどの水そのものにかかわる現象だけではなく、水域をめぐる地質や現在および過去の地理、水域とその周辺に生息する生物なども含めて扱われる。すなわち、陸水域に関連した物理学、化学、生物学、地質学などの諸科学が独自の主題をもちつつも、互いに補完しあいながら研究が進められている。また、とりわけ淡水は飲料水をはじめとする種々の用水として人間生活にとってきわめて重要なものでありながら、地球上に存在する量がきわめて限られているため、水質汚染の進行や水不足とも関連してこの学問の応用面での役割が重要視されている。関係する学術団体として国内には日本陸水学会が、国際的には国際理論応用陸水学会(SIL)がある。
[渡辺 直]
『上野益三著『陸水学史』(1977・培風館)』▽『半谷高久著『陸水学への招待』(1980・東海大学出版会)』▽『飯田貞夫著『やさしい陸水学 地下水・河川・湖沼の環境』(1997・文化書房博文社)』▽『A・J・ホーン、C・R・ゴールドマン著、手塚泰彦訳『陸水学』(1999・京都大学学術出版会)』
地球上の陸水(河川,湖沼,地下水等)を研究する学問。陸水学という語は1931年日本陸水学会創立に使用されたもの。これとほぼ同一の対象を研究する分野に水文学がある。しかし水文学が主として河川を中心とする水の循環を研究の主題においてきたのに対し,陸水学はその成立過程から湖沼中心の発達をしてきた。現在陸水学は陸水の総合科学と考えられており,河川,湖沼,地下水,雪氷などとして存在する陸水それぞれを対象に,河川学,湖沼学,地下水学,雪氷学が存在し,陸水学の中に含まれる。陸水学は研究テーマからみれば,生物,化学,物理等になるが,生物的なテーマが最も多いのは陸水学の成立に淡水生物学の寄与が大きかったことを示している。現在は時代を反映して,汚染,公害,自然保護等の研究テーマが増加しつつある。中心学会は日本陸水学会である。
執筆者:堀内 清司
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…海洋学に含まれる海洋誌も地理学にとって重要であるが,この部分を開拓する学者は少ない。水理学に含まれる分野では湖沼学,河川学など陸水学と総称されるものが重要で,この中には地下水の調査なども含まれている。生物学との関係も深く,とくに植物の生態・分布,植物帯の研究が重要である。…
…この2側面はそれぞれの後継ぎを思いがけないところに見いだした。 湖沼学(のちに陸水学となる)はすでに19世紀に成立していたが,そこでは湖沼中の物質循環の問題と湖沼生物の生態の追求が並行して進められていた。その中から有機化合物や無機塩類の循環における生物の役割が注目され,湖沼生物を生産者,消費者,分解者(還元者)に類型化することが20世紀初めころから行われた。…
…地球を物理学的方法によって研究する地球科学の一分野。固体としての地球(岩石圏)を取り扱う測地学,地震学,火山学,地磁気学などと,地球表面あるいは近傍の水圏および気圏を取り扱う海洋学,気象学,陸水学,超高層物理学などの2大分野に大別される。測地学は地球の形,大きさ,内部構造などを測地観測の結果をもとに議論し,また地殻の変動を議論する。…
※「陸水学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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