日本大百科全書(ニッポニカ) 「通州事件」の意味・わかりやすい解説
通州事件
つうしゅうじけん
日本の華北(かほく)支配に対する中国軍の抵抗事件。日本の傀儡(かいらい)政権冀東(きとう)防共自治政府のある河北省通州は、塘沽(タンクー)協定により非武装地帯とされていたが、宋哲元麾下(そうてつげんきか)の第29軍の一部隊の駐屯が黙認されていた。盧溝橋(ろこうきょう)事件により、日本軍は1937年(昭和12)7月27日、第29軍掃討のため通州を爆撃、自治政府保安隊に大きな被害を与えた。このため保安隊は自治政府に反乱を起こし、第29軍とともに日本軍守備隊を攻撃、同政府長官殷汝耕(いんじょこう)を捕らえたほか、在留日本人・朝鮮人二百数十人を殺害した。反乱は日本軍により1日で鎮圧され、自治政府の謝罪、慰藉(いしゃ)金の支払いなどで解決したが、日本では中国側の暴虐として過大に宣伝された。
[岡部牧夫]
『今井武夫著『支那事変の回想』(1964・みすず書房)』