力学的に共通な運動をもっている数十から数百個の星の集まり。おうし座のヒヤデス(地球からの距離149光年)を代表として、いくつか知られている。一つの運動星団に属する星々の動きは、天球上のある1点に収束するか、またはそこから発散しているように観測される。運動星団は散開星団の一種であり、それが偶然に太陽の近くを通過中であるためにこのような運動特性をもつ。平行なレールが先に行くにしたがって細くなり、ついには1点に収束して見えるのと同じ理屈である。この運動特性を利用して計算した運動星団までの距離は精度が高く、宇宙における距離尺度の重要な原器の一つとなっている。
[吉澤正則・藤井 旭]
『宇野正宏他著『理科年表をおもしろくする本』(1999・丸善)』
空間運動が共通な星々の集団。とくに,天球面上の分布からは一見共通性もなくまとまりもない星々であっても,視線速度や固有運動がほぼ等しく,天球面上の運動ベクトルがことごとく天球上の1点(収束点)に収束するように見える星々の集合をいう。星々の分布や化学組成の観点からは散開星団に分類され,ヒヤデス星団,プレヤデス星団,おおぐま星団などが代表例である。1点に収束して見えるのは,空間内を平行移動しているためで,収束点はその平行運動の方向である。おおぐま星団を構成する星々はほとんど全天に散らばっており,一見星団のようには見えない。これは太陽が通過中のおおぐま星団に覆われていることを示している。ヒヤデス星団は約160個の星から構成され,天球上約30°×30°四方に散らばって見えるが,それらは一定の方向に動いている。運動星団の距離は,その収束点,視線速度,固有運動から直接導ける。したがって,運動星団を構成する星々,とくにセファイド型変光星の絶対等級が得られるから,それに基づいて他の散開星団や銀河の距離を測ることができる。その意味で運動星団は宇宙の距離尺度を与えている。
執筆者:宮本 昌典
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