過失致死傷罪(読み)カシツチシショウザイ

デジタル大辞泉 「過失致死傷罪」の意味・読み・例文・類語

かしつちししょう‐ざい〔クワシツチシシヤウ‐〕【過失致死傷罪】

過失によって人を死傷させる罪。過失傷害過失致死業務上過失致死傷等などの罪が刑法に規定されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「過失致死傷罪」の意味・わかりやすい解説

過失致死傷罪 (かしつちししょうざい)

過失によって人を傷害し,または人を死なせる罪。刑法28章に,過失傷害罪(209条。刑は30万円以下の罰金または科料。ただし,被害者等からの告訴がなければ起訴されない),過失致死罪(210条。刑は50万円以下の罰金),業務上過失致死傷罪(211条前段。刑は5年以下の懲役もしくは禁錮,または50万円以下の罰金),重過失致死傷罪(211条後段。刑は業務上過失致死傷罪と同じ)に分けて定められている。刑法は,この場合の過失を,単純な過失と業務上過失および重過失に分け,第1の場合には,生じた結果が傷害か死かによって処罰に差を設けるが,後の二つの場合には,過失の重大さを重要視して,そうした区別をせず,一律に重い刑罰を定めている。現代社会においては,これらのうち,業務上過失致死傷罪の比重が圧倒的に大きく,警察の統計では,刑法典に定められた全犯罪の発生件数中4分の1強を占めている。その大多数は交通事故に関するものである。交通事故の激増に伴って,業務上過失致死傷罪の刑罰も,1968年,従来の3年以下の禁錮から現在の刑罰に引き上げられた。業務上過失致死傷罪は,また公害や企業災害などに対しても大きな役割を果たしている(公害犯罪)。業務上過失致死傷罪でいう業務の範囲は,日常の用語法をこえて,非常に広く解されている。人の生命・身体に危険を及ぼす行為が反復継続して行われる場合であれば,すべて業務だとされる。したがって,収入を得るための職業的行為である必要はなく,反復継続性さえあれば,娯楽のための自動車運転狩猟なども含まれるのである。業務上過失致死傷罪が重く処罰される根拠については,業務者にはより高度の注意義務が課されているからだとする説,業務者の注意能力が高いとみなされているのだとする説がある。

 なお,傷害や死亡という結果が生ずると思っていなくても,暴行故意があれば,(過失致死傷罪ではなく)傷害罪傷害致死罪が成立する。
過失
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「過失致死傷罪」の意味・わかりやすい解説

過失致死傷罪
かしつちししょうざい

過失により他人を死亡または負傷させる罪。現行刑法では、第209条が過失致傷(または過失傷害)を、また、第210条が過失致死を処罰している。このうち、過失致傷罪は親告罪である(刑法209条2項)。これらの罪における過失は単純過失とよばれ、第211条の業務上過失、自動車運転過失、重過失と区別されている。たとえば家事、自転車運転、スポーツなどにおける死傷事故での過失が単純過失にあたり、これに対して、企業災害、医療事故など、社会生活上反覆・継続して行われる危険な活動における死傷事故は、業務上過失致死傷罪により処罰されている。自動車運転による過失致死傷事件についても、かつては業務上過失致死傷罪により処罰されていたが、自動車事故が多発し、大きな社会問題となるなかで、2007年(平成19)、自動車運転過失致死傷罪が新設され、これにより処罰されることとなった。

[名和鐵郎]

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