市場において取引量(消費量,生産量)と価格がどのように定まるかについて,またそれに付随する問題について一つの簡潔な解答を与えるものが部分均衡理論である。部分均衡分析はケンブリッジ学派のA.マーシャルによって多く援用されて以来,その簡便さのために経済分析の第1次接近として今なお,さかんに用いられている。
いま,縦軸にたとえばある生産物の価格をとり,各価格に対してその下で消費者が購入したいと欲する生産物の数量を対応させると,一つの曲線が描かれる。これをその消費者の需要曲線という。そのような需要曲線を横に加え合わせたもの,すなわち各価格に対して市場全体の需要量を対応させたものが市場需要曲線である。各消費者とも価格が低いほど多くの生産物を需要するのが普通であるから,特殊な場合を除き(市場)需要曲線は右下がりとなる。つぎに各価格に対してその下で生産者が販売したいと欲する財の数量を対応させると,この生産者の供給曲線が導かれる。各生産者とも価格が高いほど多くの財を生産するから,市場全体についての供給曲線も右上がりになる。さて任意に与えられた価格において,その下での市場の需要量と供給量とは一般に一致しない。前者が後者を上まわればより高い価格が,反対の場合はより低い価格が提示され,両者が一致するときのみその価格で取引されるであろう。このように価格および取引量は市場の需要曲線と供給曲線の交点で決定され,両曲線の形状を規定する外的条件に変化がないかぎり,その状態が持続するというのが部分均衡理論の基本的な考えである。この外的条件が変化したときの経済的影響は,たとえば比較静学の方法によって分析され,その内容も部分均衡理論の主要な一部をなすものである。
部分均衡理論では一つ一つの市場を独立に取り上げそこでの均衡取引量や均衡価格を求めていくが,それぞれの市場が相互に依存していることを考えると,理論的整合性のためにはすべての市場の同時均衡を問題にする必要がある。そのような立場をとる理論が一般均衡理論である。
→一般均衡理論 →市場均衡
執筆者:川又 邦雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…生産者が供給しようとする財(たとえば生産物)の総量が,消費者が需要しようとする総量に合致するように取引量が定まり,外的条件の変化がないかぎりその状態が持続されるというのが,市場均衡の基本となる思想である。その最も簡潔な場合を理論化した部分均衡理論は,一つの財だけをとり出し,その市場に直接関係ない諸条件を所与として,均衡を論ずるものである。これに対して一般均衡理論は,人々の嗜好,生産技術,資源の量,法・経済制度等を外的条件として一定とするが,さまざまな財の市場の相互依存関係を考慮して社会全体の経済量の均衡について説明するものである。…
※「部分均衡理論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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