都市経済(読み)としけいざい(英語表記)urban economy

改訂新版 世界大百科事典 「都市経済」の意味・わかりやすい解説

都市経済 (としけいざい)
urban economy

都市は,社会的・経済的観点からみると,(1)大量の人口・経済活動が集中して存在している,(2)第2次・第3次産業などの非農業的土地利用が支配的である,(3)種々様々の人々が生活し,多種多様な経済活動が営まれ,そのため種々の外部効果が生じ社会的相互作用が活発に行われる地域である。このような地域が経済的に成立するためには,その周辺に,食料および原料を供給する農村ヒンターランド(後背地)として存在していることが必要であるが,交通の発達とともに,一方では食料や原料の供給地は都市の周辺だけでなく全世界に拡大していった。他方,都市の経済活動は従来の都市の境界を越えて拡散し,都市の周辺は郊外として発展し,郊外化が進行することになった。その結果,都市の郊外は中心の都市と社会的,経済的に一体的な関係をもつ都市地域に転化していき,中心都市と郊外とによって大都市圏が形成される。また中心都市の中心部には通常,大都市圏における中心機能や管理機能を果たす行政金融商業,サービス業などのビジネスが集中して立地する中心業務地区が形成され,サービス経済化の進展とともに,発展しつつある。

都市の成長・発展をもたらすのは都市の産業活動であるが,都市の産業は大きく二つに分けることができる。第1は,都市外からの需要を対象として生産活動を営む移出産業であり,第2は都市内のローカルな市場を対象とする地方産業である。前者は都市の持続的成長を可能にし,都市の盛衰を左右する産業であり,したがって基礎的産業と呼ばれる。これに対して,後者都市人口の生活を支え基礎的産業の経済活動を支えるものではあるが,都市成長の起動因となるものではないため,非基礎的産業と呼ばれる。そして,基礎的産業に対する需要が増加して,その雇用量が増加すると,これに対応して非基礎的産業に対する需要も派生的に増加して,その雇用量が増加するという波及関係が存在しており,基礎的産業の雇用増加が非基礎的産業の雇用を増加させるという波及効果を伴って都市の産業全体の雇用増加をもたらすことになる。次に,都市への産業立地を促し,都市の成長をもたらす要因をあげよう。その第1は,立地上の比較優位性である。世界には種々の天然資源が不均等に分布しているが,重要な天然資源への近接性の点から比較優位性が発生する。都市にとって重要な資源は土地,水,気候条件,交通条件であり,大都市の多くは背後に広大な平野を有し,天然の水路や良港が利用可能な所に立地している。第2に重要なのは〈集積の利益〉である。これは規模の経済(大規模生産の利益)と集積の経済に分けることができ,また後者はさらに地域特化の経済と都市化の経済に分けられるが,このうち都市化の経済は多種多様な産業や企業や人間が一つの地域に集中することから生ずる外部経済効果にほかならない。しかし,集積が過度に進むと,過密問題や公害問題,地価騰貴や住宅不足の問題など,さまざまの都市問題が発生する(〈集積の利益・不利益〉の項参照)。これらの都市問題を解決し,都市の経済活動を円滑に機能させるためには,都市政府は都市財政を通じて,種々の公共サービスを提供するとともに,都市計画を実施しなければならない。
都市財政 →都市問題
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