酸化数ⅡおよびⅢのコバルトの酸化物と,両方のコバルトを含む酸化物が知られている。
化学式CoO。コバルトを空気中で約900℃以上に加熱するか,あるいはコバルト(Ⅱ)の硝酸塩などを空気を断って加熱して分解すると得られる。灰緑色粉末。比重5.7~6.7。水素,炭素などと加熱すると容易に還元されて金属コバルトになる。酸に可溶。陶磁器,ガラスの着色剤などに用いられる。
化学式Co2O3。種々の方法でこの組成の褐黒色粉末が得られているが,結晶格子のすきまにOの入ったCoOであったり,水和物であったりしていて,純粋なものではないといわれている。
四酸化三コバルトともいう。化学式Co3O4。コバルトを空気中で400~500℃で加熱して得られる。黒色粉末。CoⅡCo2ⅢO4のスピネル型構造で,CoⅣCo2ⅡO4ではない。空気中で加熱すると940℃で速やかにCoOになる。無機酸に徐々に溶ける。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】酸化コバルト(Ⅱ):CoO(74.93).炭酸コバルトを空気を断って熱するか,金属コバルトを赤熱して水蒸気を作用させると得られる.灰白色の粉末または結晶.密度6.45 g cm-3.融点1800 ℃.水,アンモニア水,エタノールに不溶,酸に可溶.空気中で加熱するとCo3O4になる.湿った空気中では容易に酸化されてCoO(OH)になる.磁性材料の原料.二次電池材料,各種酸化反応の触媒,磁器の着色剤,ガラスの製造などに用いられる.[CAS 1307-96-6]【Ⅱ】酸化コバルト(Ⅲ):Co2O3(165.86).三酸化二コバルトともいう.塩化コバルト(Ⅱ)を塩素酸カリウムで酸化すると得られる.黒褐色の粉末.吸湿性がある.密度5.18 g cm-3.895 ℃ で分解してCo3O4を生じる.酸化作用があり,塩酸に溶かすと塩素を発生する.水,エタノールに不溶.ガラス着色剤に用いられる.[CAS 1308-04-9][CAS 12016-80-7:Co2O3・H2O]【Ⅲ】酸化コバルト(Ⅱ)二コバルト(Ⅲ):Co3O4(240.80).四酸化三コバルトともいう.水酸化コバルトを空気中で強熱すると得られる.黒色の粉末.吸湿性がある.密度6.07 g cm-3.CoⅡ CoⅢ2O4のスピネル型構造.900~950 ℃ でCoOになる.水,塩酸,硝酸,王水に不溶,硫酸や融解水酸化ナトリウムに可溶.二次電池材料,電子材料,顔料,うわぐすりなどに用いられる.[CAS 1308-06-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
コバルトと酸素の化合物で、次の組成のものが知られている。
(1)酸化コバルト(Ⅱ) 一酸化コバルトともいう。製法によって黄・褐・黒・灰緑色などの違いがあり、比重にもある程度の幅がある。炭酸コバルトを空気を断って加熱すると、理想的組成に近い淡灰緑色の結晶が得られる。塩化ナトリウム型構造で、室温で反強磁性体である。空気中で安定であるが、酸に溶ける。
(2)酸化二コバルト(Ⅲ)コバルト(Ⅱ) 化学式Co3O4、式量240.8。四酸化三コバルトともいう。酸化コバルト(Ⅱ)を酸素中427℃に熱すると得られる立方晶系の黒色の結晶。正スピネル構造をとるが、自発磁化をもたない。水には不溶だが酸には徐々に溶ける。950℃以上に熱すると酸化コバルト(Ⅱ)になる。なお、酸化コバルト(Ⅲ)Co2O3の組成に相当する化合物の存在は確認されていない。
[鳥居泰男]
酸化コバルト(Ⅱ)
CoO
式量 74.9
融点 1800℃(分解)
沸点 1795±20℃
比重 5.7~6.7
結晶系 立方
…酸化数IIおよびIIIのコバルトの酸化物と,両方のコバルトを含む酸化物が知られている。
[酸化コバルト(II)]
化学式CoO。コバルトを空気中で約900℃以上に加熱するか,あるいはコバルト(II)の硝酸塩などを空気を断って加熱して分解すると得られる。…
…酸化数IIおよびIIIのコバルトの酸化物と,両方のコバルトを含む酸化物が知られている。
[酸化コバルト(II)]
化学式CoO。コバルトを空気中で約900℃以上に加熱するか,あるいはコバルト(II)の硝酸塩などを空気を断って加熱して分解すると得られる。…
※「酸化コバルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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