古代の発酵調味料、現代では主としてなめみその一種である醤みそのことをいう。古代の醤は、魚、獣肉、大豆などに醤(こうじ)と塩を加えて熟成し、発酵させた塩辛風のもので、そのまま食用にしたり、塩とともに調味料として重用された。古くから日本でもつくられ、奈良時代には庶民の間にも普及していたとみられる。朝廷では大膳職(だいぜんしき)の主醤(ひしおのつかさ)が醤、豉(くき)、未醤(みそ)などの製造をつかさどり、平安京の東市に醤店(ひしおだな)があり、醤を市販するまでになっていた。また大陸からは唐(から)醤、高麗(こま)醤などが伝来している。中国魏(ぎ)の賈思勰(かしきょう)編『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(6世紀)の巻8の上には醤の作り方が記され、黒豆を原料とするものを醤(しょう)、牛・羊・鹿(しか)・兎(うさぎ)などの肉を用いるものを肉醤(ししびしお)、鯉(こい)などの魚を用いるものを魚醤(ぎょしょう)としている。また蝦(えび)・蟹(かに)などを原料としてもつくれるという。なお穀醤(こくびしお)は、豆類のほかにヒエ、アワ、米なども用いられる。このほか野菜、果実、野草、海藻などを塩、酢、粕(かす)などで漬ける草(くさ)醤もあったが、これは漬物の祖型である。
醤は現在も日本や中国をはじめ東南アジア一帯で用いられている。日本と中国では大豆の醤が発達したが、東南アジアではニョクマン(ヌクマム)などの魚醤が中心である。大豆の醤はその後、みそ、しょうゆへと変化した。なめみその醤は俗に醤みそとよばれ、大豆、麦、麹、塩を加えて6か月以上発酵させ、もろみの状態にしたものである。しょうゆは、このもろみを絞ったものであるが、醤みそ用にはその目的で別につくられる。ご飯や生野菜に添えたり、和(あ)え物として用いる。魚醤は各国で魚しょうゆに発展した。
[河野友美・山口米子]
『松本忠久著『平安時代の醤油を味わう』(2006・新風舎)』
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塩蔵発酵食品として古代から作られており,米・麦・大豆などからの穀醤,鳥獣から作る肉醤,果実や海草から作る草醤があった。穀醤は味噌・醤油の原形であり,固形分から味噌が,液汁として醤油が作られるようになるのは室町時代以降とされる。東南アジアでは魚醤が調味料として広く用いられているが,日本では穀醤が主流。今でも麦と大豆を蒸し,麹とまぜて発酵させて作り,冬季のおかずとする。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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