中国,後漢末ごろに作られた字書。北海(山東省濰坊市付近)の劉煕(りゆうき)の著。27編。いま普通のテキストはこれを8巻に分ける。《爾雅》形式の訓詁の書で,その構成も〈釈天〉〈釈地〉以下,解説を伴った分類語彙集の形を取る。特色はその解説にあり,たとえば〈月(げつ)は闕(けつ)なり,満つればすなわち闕(か)くるなり〉(〈釈天〉),〈河(か)は下(か)なり,地の下る処に随いて而して通流するなり〉(〈釈水〉)のごとく,同音もしくは類似音をもつ他の文字の意味によって,問題の語の解釈にしようとする。その当時の字音の体系や,当時の人のものの考え方をうかがう資料としても重要である。なお,こうした字音の類似に頼る訓詁法は音訓もしくは声訓と呼ばれる。《釈名》は音訓を利用した字書である。注釈として清の畢沅(ひつげん)の《釈名疏証》,王先謙の《釈名疏証補》等がよく利用される。明の郎奎金が編集した《五雅》という訓詁学の叢書では《逸雅》と呼ばれている。
執筆者:尾崎 雄二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これは同音ないしは近似音等を借りて語義を説くものである。漢代に多用され,劉熙《釈名(しやくみよう)》はその専著である。たとえば,〈天,顕也。…
…
[類書の起源]
類書の起源を何に求めるかについては議論のあるところであるが,筆者の考えによればまず第1は字書である。最古の字書で十三経の一つに数えられる《爾雅(じが)》においてすでに,類関係によって文字を区分する方法がとられており,親・宮・器・楽・天・地など19類に分けられるのであるが,後漢の劉熙(りゆうき)が著した《釈名》になると釈天・釈地に始まる27類がみごとに体系化されてくる。そして,こうした分類とその体系は後の類書に大きな影響を与えた。…
※「釈名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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