釈尊寺(読み)しやくそんじ

日本歴史地名大系 「釈尊寺」の解説

釈尊寺
しやくそんじ

[現在地名]枚方市釈尊寺町

東高野街道沿いの丘上にある。浄土宗、山号霊鷲山、本尊釈迦如来。釈尊寺縁起(寺蔵)によると行基の開基で、もと行基寺と称し、一条天皇のとき現寺号・山号に改めたとする。往時は八間四面の本堂以下七堂伽藍、一二坊舎が備わり、寺領三二〇石と伝え、寺の周辺には護摩田ごまだ二王堂におうどう三宝堂さんぽうどうくちぼうなかぼうおくぼうなどの字名が残る。また、同縁起には永延元年(九八七)東大寺の僧然が宋より将来の赤栴檀釈迦像安置、後一条天皇よりの「霊鷲山」の勅額下賜を記す。釈迦像は八〇年後京都千本せんぼん釈迦堂大報恩だいほうおん寺に、さらに若狭国小浜おばまに移され、三年後、京都嵯峨清凉さがしようりよう寺本尊として安置されたといい、現本尊は然の模刻との伝承をもつ。

釈尊寺
しやくそんじ

[現在地名]小諸市大久保

天台宗延暦寺末、布引山曝巌院釈尊寺、本尊釈迦如来。俗に布引観音ぬのびきかんのんとよばれている。

御牧原みまきがはら北端の断崖にあり、境内一帯は奇岩多く、千仞の絶壁をなす。そこに長大な巨柱を建てて支えた観音堂があり、中腹には仁王門その他の堂宇がある。頂上からは千曲川、浅間山、小県ちいさがた郡・北佐久郡一帯が望める。

寺伝によれば、神亀元年(七二四)創建で、天平二〇年(七四八)岩窟に伽藍を造営、永正元年(一五〇四)滋野遠江守昌頼父子が懸崖に建てた観音堂の礎柱八本を改修、更に弘治四年(一五五八)同佐衛門佐信雅が拝殿などを造営したという。

尊寺
しやかそんじ

[現在地名]前橋市元総社町

総社そうじや神社の南約五〇〇メートルにあり、鷲霊山と号し、曹洞宗、本尊は釈迦如来。釈迦尊寺記略(「郡村誌」所収)によると、用明天皇の時代に中臣羽鳥連がおり、その妻玉照姫は聖徳太子の乳母であったので釈迦像を授けられたという。その後流謫し、上州青海おうみに住した。その孫羊大夫が朱鳥元年(六八六)に創建したという。寿永(一一八二―八五)の頃衰退し、文永年間(一二六四―七五)蘭渓が鎌倉より来て再興したという。また衰微したが永禄元年(一五五八)応山芳伝が再興したという。同一〇年五月五日の武田家朱印状写(上州瀬下氏由緒書)によれば、「釈尊寺分 四拾九貫文」が瀬下豊後守に与えられている。

釈尊寺
しやくそんじ

[現在地名]大和郡山市高田

方虚山と号し、真言宗。行基建立の寺と伝えるが未詳。明暦二年(一六五六)法春中興。現在は廃寺同様であるが、室町時代の十一面観音像と脇に平安時代中期の地蔵菩薩立像が安置されている。明治末年まで平安時代初期の十一面観音像があったが、アメリカのラングドン・ウォーナーが購入、今はボストン博物館に所蔵されているという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「釈尊寺」の意味・わかりやすい解説

釈尊寺
しゃくそんじ

長野県小諸(こもろ)市大久保にある天台宗の寺。布引山(ぬのびきさん)曝巌院(ばくがんいん)と号し、俗に布引観音(かんのん)とよばれている。本尊は釈迦如来(しゃかにょらい)。神亀(じんき)年間(724~729)聖武(しょうむ)天皇の勅命により行基(ぎょうき)が開基したという。1548年(天文17)武田氏による布引城攻めのとき兵火により焼失、現在の本堂は1724年(享保9)小諸城主牧野康重(やすしげ)によって再建されたもの。無信心の老婆が干していた布を牛にさらわれ、それを追って図らずも善光寺詣(もう)でをしたという。その牛は当山の観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)の化身といい、「牛にひかれて善光寺参り」はこの縁起に由来する。毎年5月8日の縁日には参詣(さんけい)人でにぎわう。十一面観音、馬頭(ばとう)観音、聖観音は聖徳太子作と伝える。懸崖造(けんがいづくり)の観音堂内に納められた一間四方の宮殿は、1258年(正嘉2)建立のもので、国重要文化財に指定されている。

[中山清田]


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デジタル大辞泉プラス 「釈尊寺」の解説

釈尊寺

長野県小諸市にある天台宗の寺院。山号は布引山、院号は曝巌院。本尊は釈迦如来。行基による創建と伝わる。断崖に懸かる観音堂の客殿は国の重要文化財。中には布引観音と呼ばれる観音像が安置されている。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

事典・日本の観光資源 「釈尊寺」の解説

釈尊寺

(長野県小諸市)
信州の古寺百選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

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