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長野県松本市と岐阜県高山市の境界にある峠。北の乗鞍(のりくら)岳と南の鎌(かま)ヶ峰の鞍部(あんぶ)で、標高1672メートル。野麦街道が通じ、北アルプス南端部を横断する道としてはもっとも多く利用された。信州(長野県)と飛騨(ひだ)(岐阜県)を結び、信州からは米や酒、飛騨からは飛騨ブリや曲物(まげもの)が運ばれた。冬は積雪が多く、凍死する者も出たので、お助け小屋が建てられたという。
明治から大正初めにかけて飛騨から糸引き女工がこの峠を越えて諏訪(すわ)の製糸工場に働きに行き、女工たちの峠越えを描いた山本茂実(しげみ)の小説『あゝ野麦峠』やその映画化で、峠を訪れる人も多い。峠には五輪塔やお助け小屋、野麦峠の館があり、女工たちが泊まった宿が一軒残っていたが、松本市歴史の里(屋外博物館)に移築保存された。長野・岐阜両県からの車道が通じ、峠からは乗鞍岳を眼前に望むことができる。
[小林寛義]
『市川健夫著『信州の峠』(1972・第一法規出版)』
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乗鞍岳(のりくらだけ)東南,長野・岐阜県境の峠。標高1672m。江戸時代は,信州側の牛方と飛騨高山の歩荷(ぼっか)が,米・清酒・白木・曲物・ブリなどを運んだ。1871年(明治4)筑摩県がおかれると,松本と高山を結ぶ公用路となる。また諏訪地方で製糸業が発達すると飛騨の少女たちが製糸工女として通ったが,1911年に中央本線が全通すると峠はさびれた。現在,供養塔と「ああ野麦峠」の碑がある。冬期間車は通行止となる。野麦とは熊笹の意か。
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