野麦峠(読み)ノムギトウゲ

デジタル大辞泉 「野麦峠」の意味・読み・例文・類語

のむぎ‐とうげ〔‐たうげ〕【野麦峠】

長野・岐阜県境、乗鞍岳の南にある峠。標高1672メートル。明治から大正初めにかけて、飛騨地方から諏訪地方の製糸工場へ働きに出た女工たちの越えた峠として知られる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「野麦峠」の意味・読み・例文・類語

のむぎ‐とうげ‥たうげ【野麦峠】

  1. 長野県と岐阜県との境、乗鞍岳の南方にある峠。野麦街道の最大の難所で、江戸時代には能登国石川県)・越中国富山県)の海産物が、明治時代には岡谷などの製糸工場で働く岐阜県飛騨地方の女工がこの峠を越えた。標高一六七二メートル。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「野麦峠」の解説

野麦峠
のむぎとうげ

標高一六七二メートル、乗鞍のりくら岳の東南に張り出した尾根の鞍部にある。岐阜県高根たかね村野麦の名をとる。「信府統記(享保九年)の「松本ヨリ飛騨高山ヘノ道程」の本道の条に「野麦峠」とある。大野川おおのがわ番所からは「番所越え」によって野麦と通じている。峠の信州側は奈川ながわ川浦かわうらで、江戸時代に番所が置かれた。川浦から峠まで一里半の道程で、冬は積雪が多く難所で、年々凍死するものが少なくなかったので、文政八年(一八二五)奈川村永嶋藤左衛門が峠下に石室の避難小屋を造っている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「野麦峠」の意味・わかりやすい解説

野麦峠 (のむぎとうげ)

北アルプスの乗鞍岳と鎌ヶ峰との間の峠。標高1672m。松本平と飛驒高山を結ぶ野麦街道が通じ,とくに1790年(寛政2)安房(あぼう)峠越えの道が飛驒側で閉鎖されてからその重要性がいっそう高まった。江戸時代には,信州奈川村の牛方と高山の歩荷(ぼつか)が米,酒,曲物,白木などを運び,明治時代から大正初めにかけては,飛驒から諏訪地方へ製糸女工として出稼ぎに行く娘たちがこの峠を利用した。その後,野麦街道はまったくさびれ,登山客がわずかに通るだけであったが,1969年に車道が開通してから観光客が増えて峠の風情は失われ,旧道も荒廃した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「野麦峠」の意味・わかりやすい解説

野麦峠
のむぎとうげ

長野県松本市と岐阜県高山市の境界にある峠。北の乗鞍(のりくら)岳と南の鎌(かま)ヶ峰の鞍部(あんぶ)で、標高1672メートル。野麦街道が通じ、北アルプス南端部を横断する道としてはもっとも多く利用された。信州(長野県)と飛騨(ひだ)(岐阜県)を結び、信州からは米や酒、飛騨からは飛騨ブリや曲物(まげもの)が運ばれた。冬は積雪が多く、凍死する者も出たので、お助け小屋が建てられたという。

 明治から大正初めにかけて飛騨から糸引き女工がこの峠を越えて諏訪(すわ)の製糸工場に働きに行き、女工たちの峠越えを描いた山本茂実(しげみ)の小説『あゝ野麦峠』やその映画化で、峠を訪れる人も多い。峠には五輪塔やお助け小屋、野麦峠の館があり、女工たちが泊まった宿が一軒残っていたが、松本市歴史の里(屋外博物館)に移築保存された。長野・岐阜両県からの車道が通じ、峠からは乗鞍岳を眼前に望むことができる。

[小林寛義]

『市川健夫著『信州の峠』(1972・第一法規出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「野麦峠」の意味・わかりやすい解説

野麦峠【のむぎとうげ】

長野・岐阜県境,乗鞍岳の南にある峠。標高1672m。1724年の《信府統記》にみえ,明治中期まで飛騨と松本盆地を結ぶ野麦街道の難所として知られた。塩魚や塩を信州へ運び,また岡谷の製糸工場へ出稼ぎ(でかせぎ)する飛騨の女工たちが越えた。景勝地で,中部山岳国立公園南端にあたる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「野麦峠」の意味・わかりやすい解説

野麦峠
のむぎとうげ

飛騨山脈乗鞍岳南麓に位置する峠。標高 1672m。長野県松本市と岐阜県高山市の境にあり,飛騨と信濃を結ぶ野麦街道が通過する。かつては飛騨方面から白木や曲げ物,ブリなどが,信濃からは米や清酒がウシや人の背で運ばれた。明治・大正期に飛騨から諏訪地方の製糸工場に働きに出る女子工員たちが通ったことでも知られ,供養塔や碑がある。乗鞍火山を一周できる自動車道も通る。御嶽山,木曾山脈などが一望でき,紅葉が美しい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「野麦峠」の解説

野麦峠
のむぎとうげ

乗鞍岳(のりくらだけ)東南,長野・岐阜県境の峠。標高1672m。江戸時代は,信州側の牛方と飛騨高山の歩荷(ぼっか)が,米・清酒・白木・曲物・ブリなどを運んだ。1871年(明治4)筑摩県がおかれると,松本と高山を結ぶ公用路となる。また諏訪地方で製糸業が発達すると飛騨の少女たちが製糸工女として通ったが,1911年に中央本線が全通すると峠はさびれた。現在,供養塔と「ああ野麦峠」の碑がある。冬期間車は通行止となる。野麦とは熊笹の意か。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

事典・日本の観光資源 「野麦峠」の解説

野麦峠

(岐阜県高山市)
ぎふ百選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android