飛驒山脈(北アルプス)と赤石山脈(南アルプス)の中間的位置にあることから,中央アルプスとも呼ばれる。西方の木曾谷と東方の伊那谷(伊那盆地)にはさまれた地塁山脈(両側を断層崖で限られた断層山脈)で,塩尻市付近から北北東~南南西の方向に恵那山(2190m)付近まで約90kmにわたって連なっている。山頂面と木曾・伊那両谷の谷床面との比高は,最高2000m余に達しているが,山脈の幅は広いところでも20km以下である。したがって木曾山脈を遠望すると,東西両側の断層崖が谷側に向かって急斜し屛風のように見える。中央アルプスが南・北アルプスの中間的位置にあり,地塁山脈なので,展望をさまたげる前山がなく,北アルプス,南アルプスの山並みを一つの山頂から望むことができるため,登山,レクリエーション地としてすぐれた条件となっている。
山稜の連続性から,木曾山脈を北部(権兵衛峠以北)の経ヶ岳地区(断層地塊),中央部(権兵衛峠~清内路(せいないじ)峠)の駒ヶ岳地区,南部(清内路峠以南)の恵那山地区に区分できる。北部の経ヶ岳および南部の恵那山両地区の標高は,いずれも2300m以下である。これに対して中央部の駒ヶ岳地区の標高は,その北東部にあるこの山脈最高峰の駒ヶ岳付近で3000mに近く,南西部に向かって低下するが,摺古木(すりこぎ)山付近でも2000mをこえている。したがって木曾山脈の高山景観は,駒ヶ岳付近を中心に発達しており,登山者,縦走者はこの地区に多い。また木曾山脈の樹木限界は,標高2500m付近にあるといわれているため,これより低い経ヶ岳・恵那山両地区では高山植生(お花畑や高木林)を観賞することはできない。駒ヶ岳地区の山稜部付近の砂礫地に生育する乾性高山植生は,濃ヶ池,駒飼ノ池,千畳敷,三ノ沢,池ノ平,摺鉢窪(すりばちくぼ)などのカールに見られる湿性高山植生と著しい対照をなし,高山景観に変化と情趣とを添えている。地質では経ヶ岳地区はおもに古生界からなり,駒ヶ岳・恵那山両地区はおもに中生代の貫入になる花コウ岩,流紋岩などからなる。花コウ岩類などからなる駒ヶ岳・恵那山両地区の主分水界付近には,強風や残雪,風化作用によって形成された白色砂礫地などが各所に発達している。この砂礫地は,清潔な山岳のふんいきを作るとともに,透水性がよいため雨がやむと登山道はたやすく歩行でき,登山や縦走に好適な条件となっている。
経ヶ岳・恵那山両地区は比高が比較的低く,入山が容易であったが,駒ヶ岳地区における著しい比高の急斜面は,登山者に急坂や迂回した登山道の利用を余儀なくさせ,危険性や労力的・時間的負担を強いていた。このような登山上の欠点は,登山道の整備や駒ヶ岳ロープウェーの建設(1967)によって解消され,登山者の大半がロープウェーを利用するようになった。ロープウェーは起点のしらび平(1661.5m)と終点の千畳敷カール(2611.5m)との高低差950mを,7分30秒で通過できる。千畳敷カールにあるロッジや山荘は,木曾山脈の登山・観光の拠点となっている。千畳敷付近や駒ヶ岳一帯では,登山道の路面拡大と土砂の流失・崩壊を伴う裸地の拡大が見られ,土壌や高山植生の保全が緊急の課題となっている。
木曾山脈は古くから木曾谷と伊那谷の東西交通の障壁となってきた。古代の峠道として利用された神坂(みさか)峠(1595m)付近の地下を,恵那山トンネル(中央自動車道)が通過し,また清内路峠(1192m)を国道256号線が通過して便利になったところもあるが,大平峠(木曾峠,1358m)や上伊那郡の牛首峠(1072m)などの交通路は不完全である。木曾谷におけるかつての中山道や現在の中央本線(西線),国道19号線,伊那谷におけるかつての三州街道や現在の飯田線,国道153号線などは,いずれも木曾山脈の一般走向に並走している。
→木曾山
執筆者:有井 琢磨
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