御嶽山(読み)おんたけさん

精選版 日本国語大辞典 「御嶽山」の意味・読み・例文・類語

おんたけ‐さん【御嶽山】

長野・岐阜県境にある複式成層火山飛騨山脈の南端に位置する。中央火口丘の剣ケ峰に御嶽神社があり、御嶽講信者の登山者が多い。標高三〇六七メートル。木曾御嶽

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デジタル大辞泉 「御嶽山」の意味・読み・例文・類語

おんたけ‐さん【御嶽山/御岳山】

長野・岐阜両県境にある活火山。飛騨山脈南部にあり、標高3067メートル。中央火口丘の剣ヶ峰に御嶽神社がある。古代からの信仰登山の対象。木曽御嶽
[補説]かつては死火山とみなされていたが昭和54年(1979)に噴火。平成26年(2014)の水蒸気爆発による噴火では多くの登山者が巻き込まれ、63人の死者・行方不明者を出す惨事となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御嶽山」の意味・わかりやすい解説

御嶽山
おんたけさん

長野・岐阜県境にそびえる複式の成層火山。木曽御嶽(きそおんたけ)ともいう。中央火口丘の剣ヶ峰(けんがみね)が最高峰で標高3067メートル。外輪山(摩利支天(まりしてん)山、継母(ままはは)岳)、寄生火山(継子岳、三笠(みかさ)山)、噴火口跡(一ノ池~五ノ池)などが南北に連なり、これらを総称して御嶽山とよぶ。頂上周辺の一ノ池から五ノ池のうち、二ノ池と三ノ池はつねに水をたたえているが、一の池は涸(か)れていることが多い(北東側の火口壁が欠けて水は二の池へ流出している)。二ノ池は日本最高位にある湖沼で(2908メートル)、三ノ池は高山湖としては日本で第3位の深さである(13.3メートル)。六合目あたりまでは雑木やカラマツが多いが、2100メートルあたりから天然のヒノキ、コメツガ、カラマツの美林になり、八合目にはお花畑がある。雄大な裾野(すその)はスキー場、キャンプ場、別荘地などに開発されているが、開田(かいだ)高原や寒原(さむはら)高原、御嶽高原などが中心で、御嶽高原から北西の山寄りには田ノ原天然公園(2190メートル)もあって高山植物が多く、遊歩道もある。黒沢付近のブッポウソウ繁殖地は国指定天然記念物。

 また、山体は御嶽教の霊地として古くから信仰の対象になっている。江戸中期までは尾張(おわり)藩が森林保護を名目に一般人の登山を禁止していたが、天明(てんめい)・寛政(かんせい)年間(1781~1801)ごろ初めて一般人の登山が認められ、中部、関西、関東方面から信者のグループである御嶽講の登山が盛んになった。登山道沿いに七合目あたりまで講ごとに霊場(墓地)を設け、そこへ各人が死後霊が納まる場所として霊神碑を建立している。その数はおよそ2万基といわれ現在も建てられている。登山道は王滝口、黒沢口、開田口、岐阜県の濁河(にごりご)温泉口などがあり、長野県側はJR中央本線木曽福島駅からバスを利用する。なお、信者が口々に「六根清浄(ろっこんしょうじょう)お山は晴天、懺悔(さんげ)懺悔守らせたまえ」と唱えるのは、心身を清め、その功徳によって無事に登山できるように祈るもの。

[小林寛義 2018年8月21日]

火山活動

東日本火山帯に属する活火山で、玄武岩~流紋岩からなる。中央火口丘の剣ヶ峰は安山岩。まず更新世(洪積世)中期に成層火山ができ、約10万年休眠後、いまから約8万年前に大噴火してカルデラを生じ、以後、更新世末ないし現世初頭まで噴火活動を反復し、その末期に「五峰五湖」と称される一連の火口(湖)を生成した。当時死火山と思われていたが、1979年(昭和54)に突然小規模な水蒸気噴火が発生した。この噴火は「死火山」という用語を廃止するきっかけとなった。その後の地質調査で、最近7500年間(有史を除く)に少なくとも15回もの噴火があることが明らかになった。

 1991年(平成3)、2007年(平成19)にも小規模な噴気活動が発生し、2008年には、気象庁により噴火警戒レベルが導入され、レベル1「平常」に指定された。また2009年には、火山噴火予知連絡会により「火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある47火山」の一つとして選定され、常時観測火山として活動状況が24時間体制で監視されることとなった。2014年9月中旬、火山性地震が一時的に増加したが、その後減少。地殻変動を伴わなかったため、警戒レベルは引き上げられなかった。しかし、9月27日11時52分に水蒸気噴火が発生。9月27日12時36分噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられた。噴火の規模としては1979年の噴火と同様に小規模であったが、山頂付近では大きな噴石が飛散し、多数の登山者が巻き込まれた。噴火に伴い、低温の火砕流も発生し、噴煙は一時7000メートルの高さに達した。死者数58名、行方不明者数5名(2015年11月6日時点)。2014年10月以降は、噴火は発生しておらず、弱い噴煙活動や地震活動が続いてはいるものの火山活動は低下していることから、2015年6月、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)に引き下げられた。その後も噴煙活動や山頂直下付近の地震活動は緩やかに低下し、火山活動が静穏化したため、2017年8月には噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)に引き下げられている。

[諏訪 彰・中田節也 2018年8月21日]

『横内斉著『木曽御岳』(1955・木曽御嶽観光連盟)』『島田安太郎著『御嶽山』(1982・千村書店)』


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改訂新版 世界大百科事典 「御嶽山」の意味・わかりやすい解説

御嶽山 (おんたけさん)

長野・岐阜両県境,飛驒山脈の最南端に位置する複合成層火山。標高3067m。木曾の御嶽山として知られる。山頂部は俗に五峰五湖と称し,中央火口丘の剣ヶ峰を最高点に北から継子岳,摩利支天山,継母岳,王滝頂上の4峰が連なって外輪山をなし,旧火口は五つの火口湖(一ノ池~五ノ池)となっている。そのうち二ノ池と三ノ池は常時水をたたえ,二ノ池は日本最高位(2908m)の湖沼,三ノ池は高山湖としては第3位の深さ(13.3m)である。御嶽火山は,第三紀の初めころから噴火が始まり,古生層や中生層の基盤を貫いて噴出したもので,何回かの噴火を繰り返して第三紀末に現在のような火山原形がつくられた。噴火の順序は,(1)摩利支天,(2)二ノ池と三ノ池,(3)中央火口丘の一ノ池火口と四ノ池である。そのうち溶岩の噴出量が最も多かったのは摩利支天山で,広範囲に溶岩が流出し,御嶽火山の大部分を構成している。また外輪山の南東中腹の三笠山,小三笠山は,三ノ池の噴火活動と同時期の寄生火山である。1979年10月28日の御嶽山の噴火は有史以来の事で,地獄谷に新火口を開いている。

 高峻で雄大な御嶽山の山容は古来山岳信仰の対象となり,最高峰剣ヶ峰に御嶽神社奥社があり,祠や石像が安置されている。御嶽信仰の盛期は江戸時代の1790年代以降であったが,明治に入って女人禁制の解除,中央本線の開通(1910)や中山道の改修などのほか1891年のW.ウェストンの御嶽登山が契機となって登山にスポーツの要素が多くなり,多くの登山者がこの山を訪れるようになった。とくに王滝口七合目の田ノ原(2200m)までバス路線が開通し(1967),観光地としての性格は一段と強まった。とはいっても依然として信仰の山であり,白衣に身を固めて金剛杖をつき〈六根清浄〉を唱えながら登る光景は今日も続いている。登山路は王滝道,黒沢道,開田道,濁河温泉道の4コースがある。中でも王滝口と黒沢口は一合目ごとに山小屋があり,その沿道にはおびただしい石造物がまつられている。

 標高2500m以上の高山帯は一面ハイマツにおおわれ,すそ野の下部はヒノキやサワラなどの美林があり,とくにヒノキは日本三大美林として著名で国有林である。広大なすそ野は周辺の村の採草地や牧場として利用されていたが,現在はスキー場,キャンプ場,別荘団地の開発が進められて観光地化が急速に進展している。南東麓には,御嶽湖の名で親しまれている愛知用水牧尾ダムがある。これは1961年に水資源開発公団が建設したもので,有効貯水量6800万m3のロックフィル式の多目的ダムである。堰堤から上流へ延々8kmにおよぶこの人造湖には遊覧船が浮かび,湖上からの御嶽山の眺めは新しい観光資源となっている。
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木曾御嶽山はもとは各地に分布する国御嶽(くにみたけ)の一つとして,蔵王権現がまつられ,道者の登る山とされていた。江戸時代中期に尾張の覚明行者,江戸の普寛行者の2人によって,黒沢口,王滝口の登山道が整備され,それまで75日間の精進潔斎を行った者でないと登ることができなかったものが軽精進だけで登れるようになった。それ以降,覚明,普寛の系譜に属する行者達によって各地に講が結成され,全国的に普及したのである。明治期には下山応助の努力によって神道十三派の一つ御嶽教会が設立された。木曾御嶽山信仰の特色はそれを母体として新宗教が形成されたことをはじめ,山中に数万にものぼる霊神碑が立てられていること,〈御座〉をたて託宣をする習俗が顕著であることにある。霊神碑は功績のあった行者を霊神としてまつるもので,霊魂が山に帰り大神に仕えるという考え方にもとづき山中に行者名を記した碑が多数立てられている。
執筆者:

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日本歴史地名大系 「御嶽山」の解説

御嶽山
みたけさん

西大島にしおおしま大島中おおしまなか境にそびえ、標高三二〇・一メートル。山頂からの眺望はよく、瀬戸内海国立公園区域に指定される。別称の両高寺りようごうじ山は、山頂東側に平安末期頃の量剛りようごう廃寺があることによるという。廃寺跡からは礎石が発見され、周辺では布目瓦の破片が出土、付近に黒見堂くろみどう西賀寺せいがじ小林房しようりんぼう僧都そうづなどの小字が残るところから壮大な山上伽藍を推測させる。口碑では慈覚大師(円仁)が遣唐使の任を終えて帰朝の途次、当地に立寄り、同寺を建立したと伝える。永禄一二年(一五六九)反毛利氏の高屋たかや(現井原市)城主藤井皓玄は、毛利氏麾下の杉原盛重が城主であった備後国神戸かんなべ(現広島県深安郡神辺町)を攻略、一時これを占拠したが、のちに追われ逃亡し、当山西麓で没したと伝える。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御嶽山」の意味・わかりやすい解説

御嶽山
おんたけさん

長野県岐阜県の県境,乗鞍火山帯の南端にそびえる複式火山活火山で,常時観測火山。木曾御嶽ともいう。最高峰は中央火口丘の剣ヶ峰で,標高 3067m。ほかに外輪山の摩利支天山(2959m),継母岳(2867m),寄生火山の継子岳(2859m)などがある。噴火口跡は一ノ池から五ノ池まであり,二ノ池は湖面標高 2905mで,日本では最高所にある湖。山腹にはヒノキサワラなどの美林があり,2500m以上は一面ハイマツに覆われ,高山植物が見られる。近年まで記録に残る噴火活動はなかったが,1979年に剣ヶ峰の地獄谷の谷頭 2900mの高所で水蒸気爆発が起こった。1984年には長野県西部地震により南南東斜面で山体崩壊が起こり,29人の死者を出した。また 2014年9月27日には 7年ぶりに噴火し,1991年の長崎県の雲仙岳での被害を上回る 60人以上の死者・行方不明者を出し,戦後最悪の火山災害となった。古くから山岳信仰(→御岳信仰)の対象で,頂上付近にある御嶽神社は奈良時代末に信濃国司がオオナムチノカミ(大己貴神),スクナヒコナノミコト(少名彦名命)をまつったのが初めとされる。近世後期まで修験者以外の登山は禁止されたが,天明2(1782)年から各地の御嶽講が 7月10日から 9月15日までの山開きの期間中のみ登山を許された。ふもとの木曽町三岳の黒沢地区,王滝村王滝は里宮のある信仰集落で,登山者の宿泊所や神主の家が多い。長野県側のおもな登山口は王滝,三岳,開田の 3方面があるが,王滝からはバスで 7合目まで登れる。一帯は御岳県立自然公園に属する。

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百科事典マイペディア 「御嶽山」の意味・わかりやすい解説

御嶽山【おんたけさん】

長野・岐阜県境,飛騨山脈南端の活火山。安山岩からなる複式成層火山で,最高峰は中央火口丘の剣ヶ峰(3067m)。1979年10月有史以来初めて噴火。噴火地点は剣ヶ峰の南西約350m。山腹に数個の爆裂火口がある。高山植物が生育,すそ野は大森林で木曾の御料林として保護されてきた。古来修験道(しゅげんどう)の国峰の一つとして室町中期には精進潔斎のもと登拝が行われていた。その後も御嶽教の信仰登山が盛んで,剣ヶ峰に御嶽神社奥の院がある。《木曾節》でも有名。長野県の御岳県立自然公園,岐阜県の御嶽山県立自然公園に指定されている。長野県木曾福島町(現・木曽町),王滝村,岐阜県下呂市から登山路がある。2014年9月には,秋の行楽シーズンで人出が多い中再び大規模な水蒸気爆発噴火を引き起こし,死者・行方不明者を多数出す戦後最悪の火山噴火災害となった。
→関連項目王滝[村]小坂[町]木曾福島[町]下呂[市]修験道鳥居峠(長野)日本百名山乗鞍火山帯福島

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知恵蔵mini 「御嶽山」の解説

御嶽山

乗鞍(のりくら)火山列の南端に位置する複合成層火山。長野・岐阜の両県にまたがる独立峰で、最高点の剣ヶ峰は標高3067メートル。日本で2番目に高く、木曽御嶽山・御岳山・御岳などとも呼ばれる。いくつもの峰や寄生火山からなる巨大峰で、一ノ池から五ノ池まで五つの火口湖を持つ。全国に多数ある御嶽山ならびに御嶽山信仰の最高峰であり、「木曽のおんたけさん」として古くから山岳信仰の聖地として知られ、富士山に並び庶民の信仰を集めた。また、山中の王滝や剣ヶ峰などに御嶽神社がある。日本百名山、新日本百名山、花の百名山、ぎふ百山に選ばれている。現在では、登山口の標高が高いため日帰りでも登山でき、年間数万人が訪れる。長く火山活動が見られなかったが、1979年10月に大規模な水蒸気噴火があり、気象庁の常時観測火山に指定されている。84年には地震により御嶽山南斜面で大規模な山体崩壊が発生し、2007年3月にも小規模な水蒸気噴火があった。14年9月27日午前11時53分頃、激しい水蒸気噴火が発生し、同月30日午前0時半現在、死者は12人、重軽傷者は69人、山中には少なくとも心肺停止状態の24人が残っている。

(2014-9-30)

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事典 日本の地域遺産 「御嶽山」の解説

御嶽山

(長野県木曽郡王滝村;岐阜県下呂市)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「御嶽山」の解説

御嶽山

(岐阜県下呂市)
ぎふ百選」指定の観光名所。

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