金剛薩埵(読み)コンゴウサッタ

デジタル大辞泉 「金剛薩埵」の意味・読み・例文・類語

こんごう‐さった〔コンガウ‐〕【金剛薩埵】

大日如来衆生とを結ぶ役目を果たす菩薩真言密教の第二祖とされ、像は右手五鈷杵ごこしょ左手五鈷鈴を持つ姿に表される。

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精選版 日本国語大辞典 「金剛薩埵」の意味・読み・例文・類語

こんごう‐さったコンガウ‥【金剛薩埵】

  1. ( [梵語] vajra-sattva ) 仏語胎蔵界曼荼羅では金剛部院の主尊。金剛界曼荼羅では羯磨会三十七尊、理趣会十七尊の一つ形像は右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴を持つ。真言密教の付法第二祖とされる菩薩。
    1. 金剛薩埵〈京都府 仁和寺版 金剛界曼荼羅〉
      金剛薩埵〈京都府 仁和寺版 金剛界曼荼羅〉
    2. [初出の実例]「引金剛薩埵、入其身中」(出典:即身成仏義(823‐824頃))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金剛薩埵」の意味・わかりやすい解説

金剛薩埵
こんごうさった

真言密教の教理体系の中心である大日如来(だいにちにょらい)と衆生(しゅじょう)の菩提(ぼだい)心をつなぐ役割をもつ一尊。普賢菩薩(ふげんぼさつ)と同体ともいわれる。サンスクリット語ではバジラサットバVajra-sattvaという。バジラは金剛、堅い、サットバは薩埵と音写し、勇猛、有情(うじょう)の意。執(しゅう)金剛、金剛手(しゅ)、大勇(たいゆう)金剛などともいう。金剛部諸尊の部母、仏母的存在として礼拝(らいはい)され、チベットなどチベット仏教(ラマ教)文化圏でも盛んに信仰されている。また真言八祖像では付法の第二祖とされる。図像は菩薩像で、金剛界曼荼羅(まんだら)の理趣会(りしゅえ)、成身会(じょうじんね)、微細会(みさいえ)によると、五仏宝冠を頂き、右手は五鈷杵(ごこしょ)を胸前に持ち、左手は五鈷鈴を握って腰脇(わき)に置く。身色は肉色で結跏趺坐(けっかふざ)する。彫刻では高野山(こうやさん)金堂に秘仏があったが、1926年(昭和1)焼失。ほかに東寺(教王護国寺)講堂の五大菩薩像中の一体金剛薩埵(平安時代、国宝)と、随心院(京都)に鎌倉時代の作例が現存する。

[真鍋俊照]

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改訂新版 世界大百科事典 「金剛薩埵」の意味・わかりやすい解説

金剛薩埵 (こんごうさった)

サンスクリット名はバジュラ・サットゥバVajra-sattvaḥで,執金剛,金剛手秘密主などと漢訳された。衆生が生まれながらに持つ菩提心(ぼだいしん)を象徴すると同時に,菩提心によって無上の悟りを求める者を代表する。密教付法の第2祖ともいわれる。形像は菩薩形であるが,胎蔵界曼荼羅金剛手院の像と金剛界曼荼羅理趣会,成身会,微細会の像とでは,持物と手の位置に差が見られる。後者に作例があり,それは左手に五鈷鈴(ごこれい),右手に五鈷杵(ごこしよ)を持つ。単独に信仰されることはなく,東寺講堂の彫像は五大菩薩のなかの一尊であった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金剛薩埵」の意味・わかりやすい解説

金剛薩埵
こんごうさった
Vajra-sattva

執 (しゅう) 金剛,持金剛,秘密主などと漢訳されている。密教の付法相承の第2祖。大日如来の自内証 (内心の悟り) の法門を聞いて,上首であった金剛薩 埵がそれを結集し,のち龍猛 (樹) に授けたと伝えられている。金剛界曼荼羅の理趣会の本尊で,菩提心には堅固不壊 (けんごふえ) の徳のあることを示し,降三世会では,忿怒 (ふんぬ) 形を示して,衆生の煩悩障,所知障の2障を断じる相を現している。胎蔵界曼荼羅では,金剛手院の中尊となっている。教王護国寺に日本最古の像がある。

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世界大百科事典(旧版)内の金剛薩埵の言及

【普賢】より

…彫刻では大倉文化財団所蔵の像が平安時代騎象普賢像としてよく知られている。密教では金剛薩埵(こんごうさつた)と同体とされ,胎蔵曼荼羅中台八葉院・文殊院,さらに金剛界曼荼羅中に見いだされる。またさまざまな図像の変化がある。…

※「金剛薩埵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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