江戸後期の文人。越後(えちご)の塩沢(しおざわ)(新潟県南魚沼(みなみうおぬま)市)に生まれる。幼名は弥太郎、16歳で元服して名を儀三治(ぎそうじ)と改める。牧之は俳号である。生家は縮(ちぢみ)の仲買商であったが、牧之は子供のころから書画に親しみ、人並み外れた才能を示したといわれる。一方、家業を継ぐための修業にも励み、16、17歳ごろまでには商人に必要な知識をひととおり会得した。19歳のとき縮を商うため初めて江戸に出るが、商売のかたわら書を学んでいる。20歳のときに家業を継ぎ、商売繁盛に努めたが、やがて多忙な時間を割いて越後の風土の研究を行うようになってゆく。『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』『秋山記行(あきやまきこう)』はその代表作である。交友関係も多彩で、山東京伝(さんとうきょうでん)、滝沢馬琴(ばきん)(曲亭馬琴)、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)などとも交流があった。なお、牧之の生まれ故郷の塩沢に、1989年(平成1)鈴木牧之記念館が開館し、関係資料が一般公開されている。
[胡桃沢勘司]
『宮栄二・井上慶隆・高橋実編『鈴木牧之全集』全2巻(1983・中央公論社)』▽『観光資源保護財団著『塩沢町郷土博物館』(『全国ふるさと博物館ガイド』所収・1977・柏書房)』
越後国塩沢(現新潟県南魚沼市,旧塩沢町)の生れ。菅江真澄と並び江戸時代後期の地方文人として名高い。幼名を弥太郎,成人して儀三治と改め,牧之と号した。文筆の才に恵まれており,越後の風土を描いた《北越雪譜》(1836-42)は,雪国の自然や生物,機織業やサケ漁,古い民俗信仰の実態などをまとめた名作として知られている。牧之は江戸の文人との交流が深く,滝沢馬琴,大田南畝,山東京山,十返舎一九,式亭三馬との親交が知られている。《北越雪譜》は,京山が文章に目を通し,さし絵も,京山の子京水が筆をとっている。郷土を知悉しており,日常生活の細部にわたって観察した記録は,そのまま民俗資料としても価値あるものと評価されている。その他にも《秋山記行》(1831)がある。越後の山村にあって,つねに学問をたいせつにしたが,一方では商家の家業にもはげみ,精励刻苦して,衰えかけた家運をとり戻し,凶荒の年には,私財をなげうつだけの度量の持主であった。地方名望家の典型的な存在ともいえる。
執筆者:宮田 登
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(ロバート・キャンベル)
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1770.1.27~1842.5.15
江戸後期の俳人・著作家。通称儀三治,俳号秋月庵牧之。越後国魚沼郡塩沢生れ。家業は縮(ちぢみ)仲買商。諸方を遊歴して紀行を残し,しばしば江戸に出て山東京伝・曲亭馬琴・十返舎一九らと交遊した。主著「北越雪譜」(1837)は雪国の風俗・奇談を満載し,江戸時代の地誌随筆中の名作とされる。著書はほかに「秋山記行」「東遊記行」「西遊記行」。
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…越後塩沢に生まれた鈴木牧之(ぼくし)の著。信越国境中津川沿いの,平家の落人村と伝えられる秋山郷の紀行文で,十返舎一九の依頼により1828年(文政11)9月に秋山郷を探訪し,翌年には稿本が完成している。…
… 豪農豪商の成長にささえられて,地方の文化が発達した。鈴木牧之は塩沢の縮商で家業のかたわら文雅を好み,江戸の山東京伝らと交わり,雪国の風土を《北越雪譜》にまとめ,小千谷の商人広川晴軒は自然科学を学んで《三元素略説》(1865)を著し,新津の大庄屋桂誉重(かつらたかしげ)は国学に親しみ鈴木重胤の門人となり《済生要略》を著した。私塾,寺子屋が発達し,百姓の子弟で学ぶ者も多くなった。…
…古河藩の城主土井利位(としつら)は顕微鏡で雪の結晶を観察し,そのスケッチを《雪華図説》として1833年に出版している。また,越後の商人鈴木牧之は1835‐42年に《北越雪譜》を出したが,これは雪に関連した各種の話題を収めたものである。1857年には伊藤慎蔵が《颶風新話(ぐふうしんわ)》を出したが,これはイギリスの航海者ピディントンH.Piddingtonの書いた《航海者のための暴風雨に関する会話》の蘭訳をさらに和訳したもので,邦訳された最初の気象専門書である。…
…越後塩沢出身の鈴木牧之(ぼくし)(1770‐1842)著の地誌。1836‐42年刊。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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