北越雪譜(読み)ホクエツセップ

デジタル大辞泉 「北越雪譜」の意味・読み・例文・類語

ほくえつせっぷ〔ホクヱツセツプ〕【北越雪譜】

江戸後期の随筆。2編7巻。鈴木牧之すずきぼくし著。天保8~13年(1837~1842)刊。越後の雪の観察記録を中心に、雪国風俗習慣などを記述

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精選版 日本国語大辞典 「北越雪譜」の意味・読み・例文・類語

ほくえつせっぷホクヱツ‥【北越雪譜】

  1. 江戸後期の地誌。二編七冊。鈴木牧之著、岩瀬百樹(山東京山刪定、岩瀬百鶴(京水)画。天保八~一三年(一八三七‐四二)刊。越後国の雪を観察記録し、あわせて雪国の民俗・民話を一三〇余条にわたって随筆風に綴ったもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「北越雪譜」の意味・わかりやすい解説

北越雪譜
ほくえつせっぷ

江戸時代後期の越後(えちご)の自然と生活を描写した書物著者は越後塩沢の人、鈴木牧之(ぼくし)。山東京山編、山東京水画。初編3巻、2編4巻の計7巻からなる。初編は1837年(天保8)、2編は1841年に出版された。書名のとおり、雪を自然科学的な目からとらえた記述が中心をなし、日本の科学誌の先駆的存在といえるものである。一方、越後の産業や生活についても記されており、経済史および民俗学の研究にとって貴重な資料となっている。挿絵が多く入れてあり、本文の理解を助けてくれる。牧之がかかる書物を著す動機となったのは、20歳前後の江戸行きにあるといわれている。華やかな江戸の生活に比べ、「雪」という宿命を負わされた故郷様相を世間に知らせたいという願いからであったと推察される。牧之はすでに20代後半からこの出版を計画していたが、頓挫(とんざ)を繰り返し、目的を達成するまでには実に40年の歳月が費やされた。

[胡桃沢勘司]

『岡田武松校訂『北越雪譜』(岩波文庫)』『宮栄二監修『校註北越雪譜』(1970・野島出版)』『田村賢一訳・著『北越雪譜物語』(1978・新潟日報事業社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「北越雪譜」の意味・わかりやすい解説

北越雪譜 (ほくえつせっぷ)

越後塩沢出身の鈴木牧之(ぼくし)(1770-1842)著の地誌。1836-42年刊。初編上中下巻3冊,二編4巻4冊の計7冊よりなる。牧之はこの稿本の刪定(さんてい)を山東京山に依頼し,挿画も牧之自筆のものを京山の子京水が描き直したものという。出版まで長い紆余曲折があったが,初編は江戸中で評判となり,これを置かぬ貸本屋には客が来ぬほどであったという。《北越雪譜》は,《秋山記行》とともに雪国の生活ぶりを,自然や生物,奇事異聞,機織やサケ漁などの生業,子どもの遊び,民俗行事などを通して詳細に述べたもので,1819年(文政2)の越後雪見行脚はこの書のための取材旅行でもあった。本書には,雪の結晶など雪や生物の細かな観察記録のほか,花水祝,山言葉,雪中の用具,浦佐の堂参(どうまいり),餅花,斎の神祭事,鳥追櫓など資料的価値の高い民俗学的記述も多くみられる。
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日本歴史地名大系 「北越雪譜」の解説

北越雪譜
ほくえつせつぷ

七巻 鈴木牧之(儀三治)著 初編天保七年刊、二編同一三年刊

版本 新潟県立図書館・長岡市立図書館・上越市立高田図書館ほか

解説 魚沼郡塩沢の商人鈴木牧之が江戸の文人山東京山の援助で江戸文渓堂から出版したもの。雪の成因・形状・降雪から、縮布・鮭漁・年中行事・雪具・童戯・伝説など、越後各地の風物・産業・習慣を雪を舞台に描いており、越後の地誌のなかでは最もよく知られる。

複製本 野島出版版(昭和四三―四四年刊)・名著刊行会版(昭和四三年刊)

活字本 岩波文庫版(昭和一三年刊)・日本庶民生活史料集成九

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百科事典マイペディア 「北越雪譜」の意味・わかりやすい解説

北越雪譜【ほくえつせっぷ】

江戸後期の異色の地誌。鈴木牧之(ぼくし)著。7巻。1836年―1842年刊。著者の郷里越後の,雪を中心とした風俗習慣を記述したもの。山東京伝の弟岩瀬(山東)京山の刪定(さんてい)。息子の京水が著者の絵をもとにさし絵を描き,好評で幾度も版を重ねた。山言葉や雪中の用具など,民俗学資料としても貴重な記述がある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「北越雪譜」の解説

北越雪譜
ほくえつせっぷ

江戸後期,雪国越後に関する地誌・随筆。初編3巻・2編4巻。鈴木牧之(ぼくし)著。1836~42年(天保7~13)刊。編集・刊行に山東京山(さんとうきょうざん)が協力,挿絵も牧之の原画をもとに京山の子京水が描いた。越後国魚沼(うおぬま)地方を中心に,雪国の自然と生活・民俗・伝説や産業などを随筆風に記述。雪の結晶や生物などの科学的な観察にもすぐれている。江戸の版元文渓堂以来版を重ね,気象・産業・民俗学などの資料的価値も高い。「岩波文庫」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「北越雪譜」の意味・わかりやすい解説

北越雪譜
ほくえつせっぷ

江戸時代後期の随筆。2編7冊。鈴木牧之著,山東京山編。天保6 (1835) 年序。同7~13年刊。越後の風物,風俗などを 123条にわたって記したもの。単なる風物誌,地誌にとどまらず,種々の文献,故事を引用しており,馬琴,六樹園,蜀山人,京伝,一九,三馬らの江戸の文人,戯作者と交わりの深かった牧之の教養が盛込まれたもの。

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世界大百科事典(旧版)内の北越雪譜の言及

【越後国】より

… 豪農豪商の成長にささえられて,地方の文化が発達した。鈴木牧之は塩沢の縮商で家業のかたわら文雅を好み,江戸の山東京伝らと交わり,雪国の風土を《北越雪譜》にまとめ,小千谷の商人広川晴軒は自然科学を学んで《三元素略説》(1865)を著し,新津の大庄屋桂誉重(かつらたかしげ)は国学に親しみ鈴木重胤の門人となり《済生要略》を著した。私塾,寺子屋が発達し,百姓の子弟で学ぶ者も多くなった。…

【気象学】より

…古河藩の城主土井利位(としつら)は顕微鏡で雪の結晶を観察し,そのスケッチを《雪華図説》として1833年に出版している。また,越後の商人鈴木牧之は1835‐42年に《北越雪譜》を出したが,これは雪に関連した各種の話題を収めたものである。1857年には伊藤慎蔵が《颶風新話(ぐふうしんわ)》を出したが,これはイギリスの航海者ピディントンH.Piddingtonの書いた《航海者のための暴風雨に関する会話》の蘭訳をさらに和訳したもので,邦訳された最初の気象専門書である。…

【鈴木牧之】より

…幼名を弥太郎,成人して儀三治と改め,牧之と号した。文筆の才に恵まれており,越後の風土を描いた《北越雪譜》(1836‐42)は,雪国の自然や生物,機織業やサケ漁,古い民俗信仰の実態などをまとめた名作として知られている。牧之は江戸の文人との交流が深く,滝沢馬琴,大田南畝,山東京山,十返舎一九,式亭三馬との親交が知られている。…

※「北越雪譜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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