鉄マンガン重石(読み)テツマンガンジュウセキ(その他表記)wolframite

翻訳|wolframite

デジタル大辞泉 「鉄マンガン重石」の意味・読み・例文・類語

てつマンガン‐じゅうせき〔‐ヂユウセキ〕【鉄マンガン重石】

マンガンとのタングステン酸塩鉱物黒色で亜金属光沢があり、もろい。結晶板状柱状単斜晶系。タングステンの重要な鉱石。鉄満重石。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄マンガン重石」の意味・わかりやすい解説

鉄マンガン重石
てつまんがんじゅうせき
wolframite

タングステン(W)の鉱石鉱物の一つ。主として気成鉱脈ないし高温熱水鉱脈鉱床中に産し、石英を脈石鉱物とする。鉄重石およびマンガン重石と化学組成上連続する。鉄(Fe)とマンガン(Mn)の比が4対1から1対4のものをさす。一時は正タングステン酸第一鉄マンガン塩のように考えられていたが、その原子配列はタングステン酸基としての条件を満たしていない。すなわち6価のタングステンイオンの周囲の酸素の配位数が6で、WO4というタングステン酸に相当する原子団をつくっていないため、現在は複酸化物とみなされている。自形は斜方板状、錐(すい)面が発達する。茨城県西茨城郡七会(ななかい)村(現、東茨城郡城里(しろさと)町)の高取鉱山閉山)、岐阜県中津川(なかつがわ)市蛭川(ひるかわ)の恵比寿(えびす)鉱山(閉山)などの産出例が知られる。2015年の時点で、国際鉱物学連合では、これを独立種として扱っていない。英名は、タングステンのドイツ語名ウォルフラムWolframに由来する。

加藤 昭 2017年9月19日]



鉄マンガン重石(データノート)
てつまんがんじゅうせきでーたのーと

鉄マンガン重石
 英名    wolframite
 化学式   (Fe,Mn)WO4
 少量成分  Fe3+
 結晶系   単斜
 硬度    4~4.5
 比重    ~7.5
 色     黒
 光沢    亜金属
 条痕    暗褐黒
 劈開    一方向に完全
       (「劈開」の項目を参照
 その他   Fe3+が置換したものはFe分が不足し、WO3品位が高くなる

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改訂新版 世界大百科事典 「鉄マンガン重石」の意味・わかりやすい解説

鉄マンガン重石 (てつマンガンじゅうせき)
wolframite

タングステンの重要な鉱石鉱物。化学成分は(Fe,Mn)WO4と表されるが,鉄重石FeWO4とマンガン重石MnWO4の間の連続固溶体のなかで,鉄重石分子20~80%のものをさす。単斜晶系に属する黒色板状または柱状結晶で{010}にへき開がある。半透明~不透明で亜金属光沢を呈する。条痕はほとんど黒色。モース硬度5~5.5,比重7~7.5。花コウ岩に関係して生成したペグマタイトや石英脈中に産し,これらが風化分解して砂鉱になることもある。ボリビアアルゼンチンカナダなどに多量に産する。日本では茨城県高取鉱山,京都府鐘打鉱山などがおもな産地である(現在はともに閉山)。
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化学辞典 第2版 「鉄マンガン重石」の解説

鉄マンガン重石
テツマンガンジュウセキ
wolframite

(Fe,Mn)WO4.鉄とマンガンの比率が1:4~4:1のものを鉄マンガン重石という.ち密質石英中に黒褐色,柱状あるいは板状で産出する.単斜晶系,格子定数の比abc = 0.825:1:0.866.β = 90°28′.硬度5~5.5.密度7~7.5 g cm-3.へき開{010}に完全.灰重石とともに,タングステンの重要な鉱石.

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百科事典マイペディア 「鉄マンガン重石」の意味・わかりやすい解説

鉄マンガン重石【てつマンガンじゅうせき】

黄褐色,褐色,黒色の亜金属光沢をもつ鉱物。(Fe,Mn)WO4。単斜晶系,柱状結晶。比重7.1〜7.6,硬度4〜4.5,へき開は完全。Fe,Mn両成分間に完全固溶体を作る。屈折率2.1〜2.4で,Fe量の増加とともに不透明に近くなる。ペグマタイト・接触変成鉱床などに産し,タングステンの最も重要な鉱石鉱物。日本では兵庫県明延鉱山などに産出した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄マンガン重石」の意味・わかりやすい解説

鉄マンガン重石
てつマンガンじゅうせき
wolframite

タングステンの最も重要な鉱石鉱物。鉄重石 FeWO4 とマンガン重石 MnWO4 の固溶体で鉄重石 20~80%のもの。単斜晶系。黒色で板状,柱状結晶。硬度5~5.5,比重7~7.5。条痕は黒色。

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