日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄重石華」の意味・わかりやすい解説
鉄重石華
てつじゅうせきか
ferritungstite
含水複水酸化物。W6+およびFe3+を主成分とし、ごく少量のアルカリ・アルカリ土類金属を含む。化学式を(K,Na,Ca)x(W6+,Fe3+)2(O,OH)6・nH2Oで与えた場合、x~0.2程度のものまで存在する。パイロクロアpyrochlore(NaCaNb2O6(OH,F))と同構造で、パイロクロア‐マイクロ石microlite(NaCaTa2O6(OH,F))系に入れられる。自形は正八面体。電子顕微鏡下で確認できる。六角板状になったものもある。あまりに細か過ぎて硬度の測定などは行われていない。
各種タングステン鉱床、とくに気成鉱脈鉱床産の灰重石や鉄重石などの風化分解産物としてみられる。日本では、鹿児島県熊毛(くまげ)郡屋久(やく)町(現、屋久島町)仁田(にった)鉱山(閉山)からのものが有名である。共存鉱物は灰重石、鉄重石、鉄マンガン重石、石英、白雲母(しろうんも)、鉄明礬石(てつみょうばんせき)など。同定は粉末状になった灰重石という感じであるが、粉末になっても比重は大きい。命名はその化学成分による。
[加藤 昭]