(『徳川禁令考 前集第六』による)
寛永十年(1633)二月令(第一次鎖国令)
一 異国江奉書船之外舟遣(つかわし)候儀堅(かたく)停止(ちょうじ)之事
一 奉書船之外ニ日本人異国江遣申間敷(もうすまじく)候、若(もし)忍候而乗まいり候もの於有之(これあるにおいて)ハ其ものハ死罪、其船并船主共ニ留置言上可仕之事
一 異国江渡り住宅在之日本人来候ハゝ死罪可申付候、但不及是非仕合有之而、異国致逗留(とうりゅう)、五年より内ニ罷帰(まかりかえり)候ものハ遂穿鑿(せんさくをとげ)、日本ニとまり可申ニつきては御免、併(しかしながら)異国江又可立帰ニおゐては死罪可申付候事
一 伴天連(バテレン)宗旨有之所江ハ従両人(りょうにんより)可申遣之事
一 伴天連訴人ほうひ(褒美)の事
附、上之訴人には銀百枚、それより下ハ其(その)忠にしたかひ可相計之事
一 異国船申分有之而江戸江言上之間番船之事、如前々大村方江可申越之事
一 伴天連宗旨弘候南蛮人其外悪名之もの有之時ハ、如前々大村方之籠(ろう)ニ可入置之事
一 伴天連之儀船中之改迄入念可申付事
一 諸品一所江買取申儀停止之事
一 奉公人於長崎異国船之荷物唐人前より直ニ買取候儀停止之事
一 異国船荷物之書立江戸江注進候而、返事無之以前にも如前々商売可申付事
一 異国船ニつみ来り候白糸直段(ねだん)を立候而、不残五ケ所へ割符可仕之事
一 糸之外諸色(しょしき)之儀糸之直段極(きめ)候而之上、相対次第(あいたいしだい)商売可仕之事
附、荷物代銀直段立候而之上可為廿日切(はつかぎり)之事
一 異国船もとり(戻)候事九月廿日切たるへき事
但、遅来候船ハ着候而五十日切たる事
一 異国船売残し之荷物預置候儀も又預り候事も停止之事
一 五ケ所之商人長崎江来着候儀七月廿日切たるへし、それより遅く参候者ハ割符をはつし(外)可申事
一 薩摩・平戸其外いつれ之浦に着候船も、長崎之糸之直段之如くたるへし、長崎にて直段立候ハぬ以前商売停止之事
右条々可被守此旨もの也、仍執達如件(よってくだんのごとし)
寛永十年酉二月廿八日
伊賀(内藤忠重) 信濃(永井尚政)
讃岐(酒井忠勝) 大炊(土井利勝)
曽我又左衛門(古祐)殿
今村伝四郎(正長)殿
寛永十六年(1639)七月令(第五次鎖国令)
一 日本国被成御制禁候切支丹(キリシタン)宗門之儀、乍存(ぞんじながら)其趣弘彼宗之者、今ニ密々指渡之事
一 宗門之族結徒党企邪儀、則御誅罰(ごちゅうばつ)之事
一 伴天連同宗旨之者、かくれ居所江彼国よりつけ届物送りあたふる事
右因茲(ここにより)自今(じこん)以後かれうた(ガレウタ)渡海之儀、被停止(ちょうじ)之畢、此上若差渡ニおいては破却(はきゃく)其船、并乗来者速可被処斬罪之旨、所被仰出也、仍執達如件
寛永十六年卯七月五日
対馬守(阿部重次) 豊後守(阿部忠秋)
伊豆守(松平信綱) 加賀守(堀田正盛)
讃岐守(酒井忠勝) 大炊頭(土井利勝)
掃部頭(井伊直孝)
1633~36年(寛永10~13)に毎年出された幕府の長崎奉行宛の下知状と,39年のポルトガル人追放令の総称。前者は33年徳川家光が親政にあたって長崎奉行竹中重義を罷免したため,新任の長崎奉行に長崎での政務の大綱を示したもの。キリスト教徒の捜索・逮捕が命じられたほか,33・34年には奉書船以外の日本船の海外渡航禁止,海外在住の日本人の帰国制限など,35年には日本船の海外渡航の全面禁止,海外在住の日本人の帰国禁止,貿易地の長崎・平戸への限定など,36年にはポルトガル人との混血児の国外追放が規定された。39年のものは島原の乱をきっかけに旧教国であるポルトガル人の追放を命じた法令で,同時に国内の諸大名には沿岸の防備が命じられた。これらの諸政策は,海外からの宣教師潜入や日本人が海外でキリスト教徒になるのを防ぐことを主眼にしていたが,あわせて貿易統制の諸政策の総決算でもあり,日本人の海外渡航が禁止されて海外から孤立するなど,江戸時代の政治・外交体制に大きな影響を与えた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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