規模の大きな地震が起きた際に生じる周期の長い揺れ。周期の短い地震に比べて遠方まで伝わりやすい。建物の揺れの周期が地震動の周期と近いほど共振しやすく、高層ビルの上階ほど大きく長く揺れる特徴がある。2004年の新潟県中越地震では東京の六本木ヒルズでエレベーターのケーブルが損傷した。気象庁は14、15階建て以上の建物を対象に、揺れの大きさを4段階で階級付けしている。最大の4は、はわないと動けず、固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。
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地震で発生する、周期が数秒以上のゆっくりとした地震動。建物には固有周期という、その建物固有のもっとも揺れやすい周期がある。普通の木造住宅の固有周期は1秒以下であるが、高層ビルなど大型構造物になるほど、一般にその固有周期は長くなる。たとえば、50階建て程度の建物の固有周期は4秒から6秒ほどである。構造物の固有周期と地震動の周期が一致すると、構造物はきわめて大きく揺れることになり、大きな被害を生じうる。地震の規模が大きいほど、長い周期の地震波がより多く放出され、さらに長い周期の地震波ほど、より遠くまで伝わりやすい。また、厚く柔らかい堆積層(たいせきそう)では地震波がより増幅されるという傾向がある。そのため、震源の浅い大規模な地震が発生した場合、震源から遠く離れた場所でも、堆積平野では長周期地震動のため大規模構造物に大きな被害が生じることがある。そのような例として、1985年9月19日のメキシコ地震の際の震央から約400キロメートル離れたメキシコ市での中高層ビルの甚大な被害や、2011年(平成23)3月11日の東北地方太平洋沖地震の際の東京や大阪などでの高層ビル高層階の大きな揺れがあげられる。
従来の「気象庁震度階級」は、地表付近の比較的周期の短い揺れを対象としているため、高層ビル高層階の揺れを表すのには適切ではない。そこで、気象庁では、おおむね14、15階建て以上の高層ビルを対象として、長周期地震動による揺れの大きさの目安とするため、2013年に「長周期地震動階級」を導入し、「長周期地震動に関する観測情報(試行)」として運用を始めた。2016年の熊本地震では、運用開始後初めて4階級中最大の「階級4」が観測された。
[山下輝夫 2017年6月20日]
気象庁が暫定的に設定した長周期地震動階級の内容は以下のとおりである。下記記述の絶対速度応答スペクトル値とは、地震計の観測データから求めた高層ビルの高層階の床の揺れ(静止した空間に対する揺れ)の速度である。
〔1〕階級1
(a)絶対速度応答スペクトル値(Sva) 5cm/s以上15cm/s未満
(b)人の体感・行動 室内にいたほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる。
(c) 室内の状況 ブラインドなど、吊り下げものが大きく揺れる。
〔2〕階級2
(a)絶対速度応答スペクトル値(Sva) 15cm/s以上50cm/s未満
(b)人の体感・行動 室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じる。物につかまらないと歩くことがむずかしいなど、行動に支障を感じる。
(c) 室内の状況 キャスターつき什器がわずかに動く。棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。
〔3〕階級3
(a)絶対速度応答スペクトル値(Sva) 50cm/s以上100cm/s未満
(b)人の体感・行動 立っていることが困難になる。
(c)室内の状況 キャスターつき什器(じゅうき)が大きく動く。固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある。間仕切壁などにひび割れ・亀裂が入ることがある。
〔4〕階級4
(a)絶対速度応答スペクトル値(Sva) 100cm/s以上
(b)人の体感・行動 立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れに翻弄(ほんろう)される。
(c)室内の状況 キャスターつき什器が大きく動き、転倒するものがある。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。間仕切壁などにひび割れ・亀裂が多くなる。
[山下輝夫 2017年6月20日]
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