長期信用銀行法(昭和27年法律第187号)に基づいて設立される民間金融機関。預金の受入れにかえて債券(金融債)を発行し、その資金を設備資金または長期運転資金として貸し付けることを主たる業務とする。日本興業銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行(設立時は日本不動産銀行)の3行があったが、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行は1998年(平成10)相次いで経営が破綻(はたん)し、一時的に国有化され、日本興業銀行は2002年(平成12)普通銀行と分割・合併し、統合・再編されたため、同法に基づく銀行は消滅した。
長期信用銀行法の制定は、長期信用銀行の発行する金融債によって短期資金を長期化し、長期金融市場における預金銀行(市中銀行)の負担を軽減すること、つまり金融正常化のために市中銀行のオーバー・ローンの解消と公社債市場の育成、証券業務の補完にあり、高度成長期の重化学工業融資における間接金融方式の重要な構成要素の一つであった。しかし近年は、金融の自由化、国際化や大企業の資金調達の多様化などに伴い、長期信用銀行の貸出先も海外(非居住者)向け、公社・公団向け、流通・リースなどの第三次産業向けなどの融資が増加し、企業買収の仲介業務も行うなど、経営の多角化が試みられた。1990年代に入るとバブル経済が崩壊し、長期信用銀行も他の金融機関と同様に多額の不良債権を抱え、経営が悪化し、日本長期信用銀行は1998年10月23日、日本債券信用銀行は同年12月13日に、債務超過とみなされ、金融監督庁より特別公的管理が通告され、一時的に国有化された。その後、日本長期信用銀行は1999年9月アメリカのリップルウッド・ホールディングスを中心とする投資グループへの譲渡が決定、2000年3月には特別公的管理が終了し新体制での営業を開始し、2000年6月に行名を「新生銀行」と変更した(2023年にSBI新生銀行と改称)。日本債券信用銀行は2000年2月ソフトバンク(現、ソフトバンクグループ)を中心としたグループへの譲渡が決定、同年9月に特別公的管理が終了し新体制での営業を開始し、2001年1月に行名を「あおぞら銀行」と変更した。なお、日本興業銀行は2002年4月第一勧業銀行、富士銀行との分割および合併により、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行に統合・再編され、普通銀行となった。
[土方 保]
〈長期信用銀行法〉(1952公布)に基づく長期金融機関。日本興業銀行,日本長期信用銀行,日本債券信用銀行の3行があるが,それぞれ異なった沿革をもっている。同法により新設された日本長期信用銀行と,1902年設立の特殊銀行から移行した日本興業銀行の2行が52年当初から存在し,その後57年に,旧朝鮮銀行の残余財産を継承した日本不動産銀行(1977年10月に日本債券信用銀行と改称)が新設された。長期信用銀行が設けられた当時の目的は,同法1条によると,(1)長期金融の円滑化,(2)銀行業務の分化に伴う金融制度の整備,の二つにある。また普通銀行と異なり,4条において,預金の受入れに代え,債券を発行して設備資金や長期運転資金に関する貸付けを行うことを主務とする,と規定されている。現在,長期信用銀行3行とも,期間5年の利子一括払いおよび利付債券と期間1年の割引債券の3種類を発行している。97年3月末の3行の資金量は66兆3800億円,総資産は87兆2600億に達する。最近では国内産業会社だけではなく,ディーリング(既発債の売買)等の証券業務,都市再開発等の社会開発,海外資源開発やカントリー・ローンなどの国際会社分野へ積極的に進出するなど,業務の多様化が急速に進んだ。このうち日本長期信用銀行は,バブル経済期のノンバンク経由の不良債権など多額の債務をかかえて1998年経営破綻に瀕し,その救済が国政レベルの問題となっている。
執筆者:西村 隆司
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