1923年(大正12)9月1日午前11時58分、神奈川県小田原付近を震央として発生した地震。規模はM7.9。震源域は小田原から相模トラフ(さがみとらふ)沿いに南東に約100キロメートルにわたっている。このような巨大地震のエネルギーが蓄えられるには100年以上かかると考えられている。木造家屋全壊率が高かったのは、神奈川県の相模湾沿岸と房総半島南部で、所によっては50%以上に達した。東京では約4%であった。地震後各地で火災が発生し、東京での焼失面積は約38.3平方キロメートルで、本所(ほんじょ)被服廠(しょう)跡で焼死した人は4万4030人に達した。横浜では宅地面積の約75%にあたる9.5平方キロメートルを焼失し、6万軒が灰となった。そのほか、横須賀、鎌倉、厚木、秦野(はだの)、浦賀、小田原、真鶴(まなづる)、船形(ふなかた)(館山(たてやま)市)で大火があった。
この地震で、神奈川県南部、房総半島中南部が隆起し、小田原付近では約2メートルに達した。隆起は北部へ行くにしたがって減り、現在の中央線沿線では逆に数センチメートルないし数十センチメートル沈降した。相模湾でも、小田原から南東に引いた線の北側は隆起し、南側は沈降した。また、房総半島南部や三浦半島に小断層がみいだされた。しかし相模トラフの北西延長にあたる国府津(こうづ)―松田断層はこの地震では動かなかったと考えられている。神奈川県の根府川(ねぶかわ)では山津波が発生し、同集落170戸全部と停車中の列車を埋めた。津波が相模湾、房総半島南部を襲ったが、被害はなかった。
[宇佐美龍夫]
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