〈関節炎〉化膿性関節炎(読み)〈関節炎〉かのうせいかんせつえん(その他表記)Pyogenic arthritis

六訂版 家庭医学大全科 「〈関節炎〉化膿性関節炎」の解説

〈関節炎〉化膿性関節炎
〈関節炎〉かのうせいかんせつえん
Pyogenic arthritis
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 関節内に何らかの原因で細菌が入り、関節内が化膿してしまう病気です。この状態が続くと、関節の表面の軟骨が壊され、さらに骨まで破壊されるため、治療が遅れると関節の障害が残ります。そのために緊急性を要する病気のひとつといえます。

原因は何か

 細菌が関節内に侵入する経路には、以下の3つのパターンがあります。

 ①体内の他の部位に感染巣があって(扁桃腺や尿路の感染など)、細菌が血流にのって関節内に達する。

 ②関節の近くで起こった骨髄炎(こつずいえん)から波及する。

 ③けが注射などによって細菌が直接関節内に入る。

 原因となる菌は、黄色ブドウ球菌が最も多く、連鎖球菌肺炎球菌MRSAメチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などが多いと報告されています。

 糖尿病血液透析(とうせき)薬物常用(副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤など)などで治療中の人は、感染に対する抵抗力が落ちているため、化膿性関節炎にかかりやすく、また治りにくくなる傾向があります。

症状の現れ方

 関節の痛み、はれ、熱感、発赤などとともに発熱悪寒、食欲不振、全身倦怠などの全身症状がみられることもあります。小児の股関節の場合は、深いところにあり関節の状態がわかりにいので、強い痛みのためほとんど関節を動かさない、オムツ交換時にひどく泣く、といった症状が診断の手がかりとなります。

 関節の炎症が長く続くと、関節を包む膜が伸びきってまれに脱臼(だっきゅう)を起こすこともあります。さらに、皮膚に孔があき(瘻孔(ろうこう))、うみが排出されることもあります。

検査と診断

 血液検査では、白血球数の増加、赤血球沈降速度の亢進、C反応性蛋白(CRP)の陽性など、炎症性の変化がみられます。

 初期段階のX線検査では、関節の隙間が広がっている程度ですが、進行すると次第に骨の変化が出てきます。初期ではエコー(超音波)、MRI骨シンチグラフィなどによる画像検査が有用です。

 診断および使用する薬剤(抗生物質)の選択のため、原因となる菌を特定する検査が最も重要です。注射器で関節を穿刺(せんし)し採取した液を培養して、菌の種類と効果のある抗生物質を調べます。また、全身症状を伴っている場合は血液からの細菌培養を行うこともあります。

 菌が証明されれば、診断はほぼ確定できます。しかし、関節炎を起こす病気は多く、診断に迷う場合もあり、その時は血液検査や画像検査などにより総合的に判断します。

治療の方法

 診断がつき次第、早急に局所の安静と抗生物質の点滴を行います。関節にうみがたまっている場合はできるだけ注射器で吸引します。それでも効果がみられず炎症が続くようであれば、手術を行います。

 手術は関節を切開して、なかにたまっているうみを洗い流し、炎症のため傷んでしまった部分を切除します。これは、関節鏡という内視鏡を用いて小さな切開で行うこともできます。手術後は、関節の中のうみを出すように管(ドレーン)を入れたままにしておきます。また、骨髄炎と同様に関節内部に持続的に洗浄する管を留置する場合もあります(閉鎖性持続灌流(かんりゅう)法)。

 急性期の症状が落ち着けば、関節の機能を保つために、できるだけ早く運動療法などのリハビリテーションを始めます。進行して骨まで傷んでいる場合には、感染が落ち着いたあと、関節を固定する手術などを行うこともあります。

病気に気づいたらどうする

 早期に診断し治療を行うことが最も重要で、治療が遅れた場合には、関節の痛みや変形、関節の動きなどに障害が残ることがあります。

 この病気を疑うような症状があれば、一刻も早く整形外科を受診する必要があります。

関連項目

 化膿性骨髄炎結核性関節炎真菌性関節炎

田中 浩

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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