改訂新版 世界大百科事典 「闕字」の意味・わかりやすい解説
闕字 (けつじ)
文章を書くときの約束事の一つ。天皇に関連のある文字は,敬意を表すため,その上を少し空けること。元来,中国の制度で,大宝令制定のとき,日本でも採用した。すなわち大社や陵の名および乗輿,車駕,詔書,勅旨,明詔,聖化,天恩,慈旨,中宮,闕庭,朝庭,東宮,皇太子,殿下などの文字がそれである。なお令には闕字よりさらに丁寧な平出(へいしゆつ)という方法を定めている。これは皇祖,皇祖妣,皇考,皇妣(天皇の祖父母と父母),先帝,天子,天皇,皇帝,陛下などの文字や天皇の諡(おくりな)は,次の行の行頭に書くもの。中国では,ほかに擡頭(たいとう),闕画(けつかく)(欠画)も行われた。前者はもっとも丁寧な方法で,敬意を表す文字をふつうの行頭より上に出すもの。後者は文字の最後の1画を省略するもので,闕画は,江戸時代に天皇や将軍の諱(いみな)(名前のこと)にあたる文字を書くときに用いられるようになった。
執筆者:今江 広道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報