鹿児島県南部,薩摩半島南東端にある市。2006年1月旧指宿市と開聞(かいもん)町,山川(やまがわ)町が合体して成立した。人口4万4396(2010)。
指宿市北部の旧市。1954年指宿町と今和泉村が合体,市制。人口2万9649(2005)。揖宿(いぶすき)カルデラの中心部を占め,指宿温泉(食塩泉,60~85℃)は砂蒸しで有名な摺ヶ浜をはじめ数百の泉源があり,湧出量1日12万t(1997末)で日本屈指である。いぶすきの名は湯豊宿(ゆぶしゆく)に由来するといわれ,江戸時代から利用されていた。明治以後湯治客がふえ,昭和になってからバスや鉄道(現在のJR指宿枕崎線,1934)が開通し,第2次世界大戦後,特に1950年代以降近代的ホテルの新設,国民休暇村の開設,指宿スカイラインの開通などによって急速に近代的温泉都市としての形態が整った。霧島屋久国立公園の一部として,また南薩観光ルートの拠点として鹿児島県観光の一大中心である。観光サービス業と並んで農業も重要であるが水田は乏しい。しかし気候の温暖や温泉熱を利用しての野菜の栽培や,観葉植物栽培などに大きな特色がある。カンショの新品種研究で知られる農林水産省九州農業試験場や鹿児島大学農学部指宿植物試験場などがある。市街地南部には弥生と縄文の土器が層位的に出土した遺跡として知られる指宿橋牟礼川遺跡がある。
執筆者:服部 信彦
指宿市南西部の旧町,旧揖宿郡所属。人口6847(2005)。薩摩半島南東部に位置し,東シナ海に南面する。南端には基底面積が町域のおよそ2/5を占める開聞岳があり,北は九州最大の湖である池田湖に接している。年平均気温18℃,年降水量2000~2500mmと気候は温暖多雨であり,植生も亜熱帯的である。町域は,開聞岳の噴出物による礫質の土壌で,生産性は低いが,池田湖からの用水路で灌漑され,タバコ,カンショ,ソラマメなどが生産されている。水田は池田湖から流れ出る新川沿いの浅い谷に集中してみられる。和牛,豚などの生産・肥育,養鶏も盛んで,生産額は農業生産額の過半を占める。町域の大部分は霧島屋久国立公園に属し,JR指宿枕崎線が通じ,薩南観光ルートの南の拠点となっている。開聞岳北麓に《延喜式》の式内社枚聞(ひらきき)神社がある。
執筆者:吉成 直樹
指宿市南東部の旧町。薩摩半島南東端にある。旧揖宿郡所属。人口1万0326(2005)。鹿児島湾の湾口に位置し,町域は阿多カルデラの一部を占め,中心の山川港は旧火口の沈水によって形成された天然の良港である。山川港は鎖国以前は対外交易港として栄え,唐船,南蛮船が多く来港した。1583年(天正11)ころ南蛮との開港場とするの議がイエズス会との間にもたれたが,島津氏側の事情で中止された。フランシスコ・ザビエルを日本に招致したアンジロー(ヤジロー)が海外へ脱出したのも本港からである。藩政時代には船改番所が置かれ,南西諸島方面に往来する船舶を検した。また薩摩藩の琉球征服の基地ともなり,以後琉球貿易の港としてにぎわった。明治期以後はカツオ漁業の基地となり,現在も漁業は県外船を主とするカツオ漁業を中心とし,水産加工も盛んで,鰹節は全国生産量の約3割を占める。農業は広大な畑地と亜熱帯性気候を利用した園芸農業が主で,特産の山川漬の原料であるダイコンや,グラジオラスなどの花卉を産する。
町域には鰻(うなぎ)池,長崎鼻や成川(なりかわ)遺跡,18世紀初めに琉球からサツマイモの種苗を移入した前田利右衛門をまつる徳光神社があり,また成川温泉(純食塩泉,47~102℃),鰻温泉(単純泉,52~90℃)など温泉も多い。JR指宿枕崎線,国道226号線が通じる。
執筆者:吉成 直樹+桑波田 興
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鹿児島県薩摩半島(さつまはんとう)の南東部にある温泉観光都市。1954年(昭和29)指宿町と今和泉(いまいずみ)村が合併して市制施行。2006年(平成18)揖宿(いぶすき)郡山川町(やまがわちょう)、開聞町(かいもんちょう)を合併。地名の由来は「湯豊宿(ゆほすき)」という説もあるが明らかではない。指宿カルデラ(阿多カルデラ(あたかるでら))内部にあり、中央にカルデラ湖の池田湖がある。南東部、鹿児島湾口の山川港は天然の良港、南西部には開聞岳(924メートル)がそびえる。JR指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)、国道226号が通じる。縄文と弥生(やよい)時代の土器が層位的に出土した指宿橋牟礼川遺跡(はしむれがわいせき)が十二町下里(くだり)にある(国指定史跡)。中世『薩摩国図田帳』(1197)には揖宿(いぶすき)郡と記されている。近世、薩摩藩の外城(とじょう)制では宮ヶ浜と今和泉に麓(ふもと)(外城)が置かれた。幕末には全国屈指の海商、浜崎太平次(1814―1863)が密貿易で活躍。明治以降、中心地が宮ヶ浜から十二町に移り、第二次世界大戦後、観光地化が進展、摺(すり)ヶ浜をはじめ海浜地区にはホテル、旅館が林立し、一大温泉都市となった。温暖な気候と温泉熱を利用した園芸や、観葉植物の栽培、ウナギ養殖のほか、かつお節の製造、肉牛、ブタの畜産が盛んである。市域の大部分が霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園に属し、池田湖をはじめ、開聞岳、魚見岳、知林(ちりん)ヶ島などの景勝地に恵まれる。面積148.84平方キロメートル、人口3万9011(2020)。
[平岡昭利]
『『指宿市誌』(1979・指宿市)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…鹿児島県,薩摩半島南東部の温泉都市。1954年指宿町と今和泉村が合体,市制。人口3万1473(1995)。…
…温泉の湧出する砂浜などで全身を砂中に埋めて蒸し温める方法で,鹿児島県指宿(いぶすき)では〈天然砂蒸し温泉〉,大分県別府では〈砂湯〉(古くは沙湯)と称する。特に指宿では摺ヶ浜(すりがはま)を中心に汀線近くに泉源があり,南北約1kmにわたる砂浜で砂浴が可能である。…
※「指宿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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