陳和卿(読み)チンナケイ

デジタル大辞泉 「陳和卿」の意味・読み・例文・類語

ちん‐なけい〔‐ワケイ〕【陳和卿】

中国、宋の工人。平安末期に来日。治承4年(1180)の東大寺焼失後、重源ちょうげんに従い、焼損した大仏大仏殿再興協力。のち鎌倉に下り、源実朝渡宋を勧め、大船を建造したが進水に失敗した。ちんわけい生没年未詳。

ちん‐わけい【陳和卿】

ちんなけい(陳和卿)

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精選版 日本国語大辞典 「陳和卿」の意味・読み・例文・類語

ちん‐わけい【陳和卿】

  1. 鎌倉時代渡来した宋の石工。「ちんなけい」ともいう。俊乗房重源(ちょうげん)に従って、焼失した東大寺の大仏および大仏殿の再興に当たった。建保四年(一二一六)六月、鎌倉で源実朝の引見を得、実朝に渡宋をすすめて大船を建造し、翌年由比浦に進水しようとしたが浮かばず、渡宋計画は中止したという。生没年未詳。

ちん‐なけい‥ワケイ【陳和卿】

  1. ちんわけい(陳和卿)

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改訂新版 世界大百科事典 「陳和卿」の意味・わかりやすい解説

陳和卿 (ちんなけい)

平安末期から鎌倉初期にかけて,東大寺大仏,大仏殿の再興などに参加した宋の技術者。生没年不詳。治承年間(1177-81)以前に来日し,帰国できずにいた。1180年焼失した東大寺大仏の鋳師に人を得ずに困っていた勧進上人重源ちようげん)に見いだされ,82年(寿永1)1月から84年(元暦1)5月にかけ,弟陳仏寿ら7人および河内国鋳師草部是助ら14人と共同して作業を行った。85年(文治1)8月大仏開眼供養ののち,翌年から大仏殿造営のため重源や番匠たちと周防国に下って巨材採取に当たり,90年(建久1)10月大仏殿上棟を終えた。鋳造の間には河内鋳師と争いを起こし,大仏殿の用材を利用して勝手に唐船を造るなど,巧匠ではあるが驕慢な人物と評されている。1216年(建保4)鎌倉に下り,将軍源実朝の中国育王山参拝の夢を果たすべく唐船を造ったが,失敗に終わる。予想より船の重量が大きくなりすぎ,進水しなかったためらしい。その後の彼の消息は不明である。その行状を見ると,彼がほんとうに巧匠であったのかは疑わしい。
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百科事典マイペディア 「陳和卿」の意味・わかりやすい解説

陳和卿【ちんなけい】

平安末期来朝の中国(そう)の工人。生没年不詳。東大寺大勧進重源(ちょうげん)に見いだされ,1180年の兵火で焼けた東大寺復興に従事。大仏仏頭を鋳造。この功により播磨国大部(おおべ)荘などを重源より譲られたが,種々問題を起こし,やがて重源と決別。1216年鎌倉に赴き,渡宋を夢見る将軍実朝の要請で造船したが進水せずに失敗。その後の消息は不明。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陳和卿」の意味・わかりやすい解説

陳和卿
ちんなけい

生没年不詳。中国、南宋(なんそう)の工人。平安末期に来日。1180年(治承4)平重衡(しげひら)の兵火によって焼失した奈良・東大寺の再興にあたった俊乗坊重源(しゅんじょうぼうちょうげん)に招かれ、頭部や両手を損傷した大仏の修理に参画、舎弟陳仏寿(ちんぶつじゅ)ら7人の宋工、草部是助(かやべのこれすけ)ら14人の鋳師の助力を得て完成し、1185年(文治1)8月、開眼(かいげん)供養会が行われた。ついで大仏殿造営用の材木を求めるため、重源とともに周防(すおう)国に赴くなど活躍した。建築構造を強固なものにするために、宋の技術を採用したのは彼の指導による。『東大寺造立供養記』によると、宋の工人が大仏殿の右脇侍(きょうじ)、四天王の制作に携わっていることが知れるが、南大門に現存する石獅子(じし)はその遺例とされる。

[吉村 怜]

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朝日日本歴史人物事典 「陳和卿」の解説

陳和卿

生年:生没年不詳
平安末・鎌倉初期に来日した南宋の工人。『玉葉』には寿永1(1182)年来日とあるが,それ以前とする説もあり不明である。同年,弟の陳仏寿と共に俊乗坊重源に招かれ,東大寺の再興事業,特に大仏の仏頭鋳造などに当たった。その後もひき続き再建に尽力したが,播磨国(兵庫県)大部荘の帰属をめぐって東大寺側と不和となり,建保4(1216)年には鎌倉に下向した。将軍源実朝に渡宋を進言し,そのための大船を造船したが,由比ケ浜における進水に失敗し,消息が途絶えた。鎌倉初期の建築,彫刻などに宋風の新しい造形や技法をもたらした巧匠と伝えられるが,半面争うことの多い驕慢な一面も持っていた。<参考文献>岡崎譲治「宋人大工陳和卿伝」(『美術史』35号)

(浅井和春)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陳和卿」の意味・わかりやすい解説

陳和卿
ちんなけい

平安時代末期,あるいは鎌倉時代初期に宋から来朝した仏像技術者。初め九州に渡来したが,兵火のため焼け落ちた東大寺の大仏の首を鋳造するため,東大寺僧重源に招かれ,寿永2 (1183) 年 14回の冶鋳の末に完成。その功によって荘園を与えられたが,すべて東大寺に寄進。その後東大寺の荘園を押領して衆望を失った。建保4 (1216) 年6月鎌倉に下向し,将軍源実朝に面会して言葉巧みに取入り信任を得て,実朝の渡宋計画のため,鎌倉の由比ヶ浜で大船を建造し,進水式を行おうとしたが浮ばなかったという。遺作には東大寺南大門の『石造獅子像』 (現存) がある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「陳和卿」の解説

陳和卿
ちんなけい

「ちんわけい」とも。生没年不詳。平安末~鎌倉初期に活躍した中国宋の工人。鋳造や建築に造詣が深く,日本に新しい技術を伝えた。商用で来日し,1182年(寿永元)に帰国しようとしていたとき重源(ちょうげん)に請われ,80年(治承4)の兵火に損傷した東大寺大仏の復興事業に参加。とくに困難をきわめた大仏頭部の鋳造には中心的な存在として活躍。85年(文治元)の開眼供養後,大仏殿の再建にも従事した。しかし当初から日本の工人と不和を生じ,やがて重源とも別れた。1216年(建保4)に鎌倉に下り,将軍源実朝のため渡宋用の唐船を造るが失敗,その後の事績は不明。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「陳和卿」の解説

陳和卿 ちん-なけい

?-? 南宋(中国)の工人。
寿永元年(1182)重源にこわれて東大寺大仏の修復作業にくわわり,大仏頭部の鋳造などをおこなった。建保(けんぽ)4年鎌倉にいき,源実朝(さねとも)に渡宋をすすめ大船を建造するが,進水に失敗し,以後消息不明となった。名は「わけい」ともよむ。

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旺文社日本史事典 三訂版 「陳和卿」の解説

陳 和卿
ちんなけい

生没年不詳
鎌倉時代に渡来した宋の工人
「ちんわけい」とも読む。東大寺大仏再建に際し,重源 (ちようげん) の招きにより来日。鋳物師で,同寺大仏の首の鋳造を行う。重源とともに播磨浄土寺浄土堂を建設。のち鎌倉に下り,3代将軍源実朝に入宋をすすめ大船建造を計画したが実現できなかった。

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防府市歴史用語集 「陳和卿」の解説

陳和卿

 平安時代の末から鎌倉時代の初期に日本で活やくした中国の技術者です。中国に帰ろうとしていたところを重源[ちょうげん]に引き止められ、焼け落ちた東大寺の再建に協力しました。山口市の宮野に領地をもらっていたこともあります。

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世界大百科事典(旧版)内の陳和卿の言及

【大部荘】より

…その後,東大寺は交換した3荘を手放さず,国衙と紛争がおこり,62年(応保2)5月に東大寺領として確定。治承・寿永の内乱で東大寺が焼かれると,当荘は90年(建久1)東大寺大勧進俊乗房重源(ちようげん)に与えられ,重源の申請で宋人の鋳物師陳和卿(ちんなけい)にあてがわれた。重源は荘内に播磨別所としての浄土寺を建立し,甥の観阿を住まわせた。…

【鎌倉時代美術】より


[南都復興と鎌倉彫刻]
 1180年(治承4)平氏による南都の焼打ちはどちらかといえば偶発的なものであるが,東大寺と興福寺の二つの強大な古代寺院の壊滅は文化史上の大事件であり,その復興造営は鎌倉美術の歩みを急激に早めた感がある。まず東大寺でみれば,入宋三度を自称する勧進聖人重源の努力によって85年(文治1)大仏が復興されたが,その鋳造には宋人の仏工陳和卿(ちんなけい)の技術的参与がある。90年(建久1)に大仏殿が上棟,96年には大仏をめぐる脇侍や四天王などの巨大な木像群と同種の石像群がつくられた。…

※「陳和卿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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