日本歴史地名大系 「山口市」の解説 山口市やまぐちし 面積:三五六・六五平方キロ山口県の中央部やや南寄りに位置し、市域は内陸の山口盆地と、瀬戸内海沿岸の吉南(きつなん)平野にまたがり、これらを包囲するかなり広範な山地をも含む。山口市の北、阿武(あぶ)郡との境をなす山岳地帯から流出する椹野(ふしの)川が、東北の佐波(さば)郡境の山から流れ出る仁保(にほ)川と合し、ほぼ南南西に流れて山口湾に入るが、山口の市街地はこれら河川とその支流域に発達した。山口の名は、円政(えんせい)寺旧蔵の建長六年(一二五四)の年号をもつ金鼓に「防州山口月輪山円政寺天神宮」とあるのが初見である。〔原始〕縄文時代の遺跡はわずかに山口湾岸の秋穂二島美濃(あいおふたじまみの)ガ浜(はま)遺跡などに前期以降晩期まで、内陸部の後河原(うしろがわら)などに後期・晩期の遺跡がみられるが、全域的にみるとその分布はきわめて少ない。弥生時代に入るとその遺跡発見例は多くなり、内陸部では低地をひかえた小丘や山裾、山麓の緩斜面、低い台地などに多くみられる。とくに山口大学所在地の吉田(よしだ)遺跡は、弥生時代前期・中期のほか、古墳時代頃までも包含された広大な遺跡で、住居跡・水田跡など集落の構造を知ることができる。古墳は内陸部の赤妻(あかづま)古墳・茶臼山(ちやうすやま)墳墓群などがあり、盆地周辺部にもいくつか報告される。盆地内の山麓に早くからある程度の生活が営まれていたことが知られる。また海岸部にも秋穂二島の兜山(かぶとやま)古墳などがある。〔古代〕「和名抄」によると、周防国吉敷(よしき)郡内には一〇郷があり、さらに郡名と同じ吉敷郷があったとする説に従えば、一一郷があったことになる。このうち現在の山口市域に比定されているのは、八田(やた)・宇努(うの)・仲河(なかがわ)・益必(やけひと)・神前(かんざき)・八千(やち)・賀宝(かがほ)・浮囚(ふしゆう)・吉敷の九郷にわたる。平野部では山口盆地を中心に、条里制の遺構や地名を残す所がある。山口市北西部の吉敷から湯田(ゆだ)にかけての低地は、椹野川と吉敷川の河畔や山麓付近を除き、多少の変化はあるが一町四方の方格地割の坪界線が確認でき、地籍図の字界線とも一致する条里地割の一部であることが明らかにされた。この条里地割は、市街化された地域を除き大部分が水田で、山口盆地の地形の傾斜に沿って設定されている。一町四方の坪地割は長地形や半折形が混じり一定しないが、耕地地割の特質をよく残している。条里地割は、椹野川を挟んでとぎれているにもかかわらず、吉敷・朝田(あさだ)の両地域と対岸の平川(ひらかわ)地域の地割が同じ方位をとっていることは、大規模な土木工事であったことを物語っている。 山口市やまぐちし 2005年10月1日:山口市と佐波郡徳地町、吉敷郡小郡町・秋穂町・阿知須町が合併⇒【徳地町】山口県:佐波郡⇒【小郡町】山口県:吉敷郡⇒【秋穂町】山口県:吉敷郡⇒【阿知須町】山口県:吉敷郡⇒【山口市】山口県 山口市やまぐちし 2010年1月16日:山口市が阿武郡阿東町を編入⇒【山口市】[変更地名]山口県⇒【阿東町】山口県:阿武郡 出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報 Sponserd by
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山口市」の意味・わかりやすい解説 山口〔市〕やまぐち 山口県中部,椹野川中流域の山口盆地を中心に広がる市。北東は島根県に接し,南は周防灘に面する。県庁所在地。1929年山口町と吉敷村が合体して市制。1956年鋳銭司村,1963年大内町を編入。2005年徳地町,秋穂町,小郡町,阿知須町の 4町と合体。2010年阿東町を編入。古代京都の八坂神社領の朝倉荘の地。中世大内氏の支配になって京都に模した都市が造成され,今日の市街地が成立した。海外貿易の振興をはかり,京都文化を導入して学問,芸術を奨励,文化都市として発展した。弘治3(1557)年毛利氏の支配下に入り,明治4(1871)年山口県の県庁所在地となる。政治,文化,教育,観光都市として発展しているが,消費都市の性格が強い。近代工業の成立は遅れ,印刷,食品,木製品工業が中心。大内塗や徳地和紙など,古くから伝わる名産品がある。農村部では米,野菜やイチゴを産し,山間部では木材を多産する。漁業はノリの養殖が盛んで,南部の秋穂はクルマエビが特産品。国宝の瑠璃光寺五重塔,国指定史跡・名勝の常栄寺庭園,国指定重要文化財を多く有する洞春寺があるほか,朝田墳墓群,周防鋳銭司遺跡,陶陶窯跡,大内氏遺跡,萩藩主毛利家墓所,佐波川関水,野谷石風呂などが国の史跡に指定され,大村益次郎墓(国指定史跡)など明治維新に関する史跡も多い。また,フランシスコ・ザビエルが訪れた地でもあり,ザビエル記念聖堂がある。聖堂は 1991年の火災で大部分を消失したが再建された。平川の大スギ,法泉寺のシンパク,龍蔵寺のイチョウ,ゲンジボタル発生地,出雲神社ツルマンリョウ自生地,小郡のナギ自生北限地帯は国の天然記念物。湯田温泉,奥湯田温泉,阿知須温泉がある。国指定名勝の長門峡および佐波川などは長門峡県立自然公園に属する。中心市街地南部の新山口駅で山陽新幹線,JR山陽本線,山口線,宇部線が分岐し,国道2号線,9号線などが通るほか,中国縦貫自動車道と山陽自動車道を結ぶジャンクションがある。面積 1023.23km2。人口 19万3966(2020)。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報 Sponserd by