陸前高田(市)(読み)りくぜんたかた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「陸前高田(市)」の意味・わかりやすい解説

陸前高田(市)
りくぜんたかた

岩手県最南端、陸中海岸広田湾に臨む市。1955年(昭和30)高田、気仙(けせん)、広田(ひろた)の3町と小友(おとも)、米崎(よねさき)、竹駒(たけこま)、横田(よこた)、矢作(やはぎ)の5村が合併して市制施行。北部、西部は北上(きたかみ)高地支脈が連なり、山地を南流する気仙川が矢作川と合流して広田湾に注いでいる。河川の流域に耕地、市街地が開ける。古代、中世には玉山(たまやま)、雪沢(ゆきさわ)、茂の倉(しげのくら)の金山があって栄え、江戸時代は仙台藩の直轄領で、今泉(いまいずみ)に代官所(のち大肝入(おおきもいり)屋敷)が置かれた。高田は浜街道宿駅、商業町として栄えた。気候の温暖な地で水稲、麦、果樹、蔬菜(そさい)などがつくられる。伝統的な気仙大工(だいく)の中心地でもある。漁業は広田港、長部(おさべ)港を拠点とするマグロ、カツオの巻網漁のほか、広田湾ではワカメ、ノリ、ホヤホタテガイ、カキの養殖が盛ん。石灰石、粘板岩、大理石などの地下資源も豊富であるが、多くは隣接工業地に運ばれる。中沢浜貝塚(なかざわはまかいづか)は国指定史跡。三陸復興国立公園(旧、陸中海岸国立公園)域にはウミネコ繁殖地の椿島(つばきじま)、海食地形の蛇ヶ崎(じゃがさき)(ともに国指定天然記念物)、高田松原(国指定名勝)などがある。ほかに華蔵寺(けぞうじ)の宝珠マツ(ほうじゅまつ)(国指定天然記念物)や、黒崎(くろさき)仙峡の景勝地など観光資源は豊富。JR大船渡(おおふなと)線BRT(バス高速輸送システム)、国道45号、340号、343号、三陸沿岸道路が通じる。面積231.94平方キロメートル、人口1万8262(2020)。

[金野靜一]

〔東日本大震災〕2011年(平成23)の東日本大震災では死者1604人・行方不明202人、住家全壊3807棟・半壊240棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。あわせて市庁舎をはじめとする公共施設、定置網・ふ化場などの水産施設、漁港施設、海岸施設なども甚大な被害を受けた。2019年3月時点で、庁舎の移設防潮堤建設、沿岸部での造成地嵩(かさ)上げ工事などを進め、今後の目ざすまちの姿を「海と緑と太陽との共生・海浜新都市」と規定して、復興事業に取り組んでいる。

[編集部 2019年10月18日]

『陸前高田市教育委員会編『わたしたちの陸前高田市』(1987・陸前高田市)』


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