改訂新版 世界大百科事典 「モウソウチク」の意味・わかりやすい解説
モウソウチク (孟宗竹)
Phyllostachys heterocycla (Carr.) Mitf.
イネ科のタケ類のうち,日本一大きくなる種類。観賞用の代表種で,ふつうたけのこといえば本種のものであるほど美味で,大量に生産されている。大きなものは稈(かん)の直径20cm,高さ20mにもなる。稈の節(ふし)がふつう1筋で,その節の下面沿いに白い蠟質の粉がつき,若竹はとりわけ鮮やかである。葉はマダケよりも小さく,その肩毛は出てまもなく落ちる。竹の皮には紫褐色の斑紋がある。花はどのタケ類とも同じように,花弁がない。おしべの数は3本。種子は比較的得られ,米粒ぐらいの大きさ。一般にモウソウチク林では,一部のタケが開花するだけであるが,一斉開花することもある。すなわち1912年に横浜市郊外で部分開花のとき,種子をとり播きして生えたモウソウチクの子孫は79年にすべて一斉に開花して枯れた。原産地は中国。孟宗(二十四孝の一人)が親のため寒中にたけのこを採ったという中国の故事にちなんで孟宗竹の名がついたという言い伝えがあるが,南方系のタケのため,冬にたけのこが他のタケよりも大きくなっていることと関係があるかもしれない。日本への渡来は,1728年(京都,長岡京市)と1736年(鹿児島市郊外)の両説がある。分布は中国大陸では最も広く,全竹林(330万ha)の70%を占め,台湾では中央部の高山地帯だけにみられる。日本では北海道の函館付近を北限として全国に栽培されるが,栽培面積の広いのは九州である。
用途は広く,材は加工用に,たけのこは食用に,竹林は防災用の役割を果たす。なお京都市近郊では,たけのこに板框(いたがまち)をはめて四角竹(しかくだけ)として床柱などに利用する。観賞用にも多く用いられ,園芸品種のキンメイモウソウチク(金明孟宗竹)cv.Nabeshimanaは稈も地下茎もともに,黄白色の地に緑色の大小さまざまな縦じまがある。久留米では天然記念物となっている。キッコウチク(亀甲竹)cv.Heterocyclaは仏面(ぶつめん)竹または仏肚(ぶつと)竹ともいい,稈の下方の節間が亀の甲のようにふくれている。観賞用にもされるが,工芸材料ともなる。たけのこのつくり方には,年内さぐり掘り,電熱線利用の促成栽培,普通栽培がある。たけのこにはタンパク質,脂肪,炭水化物が含まれるが,カロリーはそれほど高くはない。煮物として利用するほか,加工用として缶詰,乾燥たけのこがあり需要は多い。ごく若いたけのこはとってすぐに刺身にして食べる。
執筆者:上田 弘一郎+高橋 文次郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報