複数の男性と複数の女性が同時に婚姻関係にある婚姻の形態。群婚ともいう。L・モルガンがその著書『古代社会』(1877)のなかで、一妻多夫婚から一夫多妻婚へ、さらには一夫一婦婚へという婚姻の進化の過程において、それら3形態に先行したはずの婚姻形態としてその存在を推測し、またそれをエンゲルスが『家族、私有財産および国家の起原』で大々的に取り上げたために一躍有名になった。モルガンがその推論の根拠としたのはハワイ人の親族名称で、彼らは同世代のイトコたちをすべて兄弟と同じ名称で、またオジ・オバは父・母と同じ名称でよぶが、これは兄弟姉妹が互いに妻と夫を共有しあっていたかつての集団婚の名残(なごり)であると考えた。しかし今日の人類学では、集団婚の存在はほぼ否定されている。というのは、社会が生産技術のごく低い段階から発展し、それに伴い婚姻形態も進化したという彼の考えに基づくと、生産技術のもっとも低い採集狩猟民社会のほとんどが一夫一婦婚であり、一夫多妻婚や一妻多夫婚はかなり生産水準の高い農民社会に多くみられるという事実を説明できないからである。また、単なる性行為と、多くの社会的権利義務の伴う婚姻とを区別する最近の人類学の視点からは、現在・過去のいかなる民族資料にも集団婚の事実は認められないのである。
[山本真鳥]
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…では,生物学的な性的結合がどのようにして婚姻という文化的制度として成立するに至ったのであろうか。 19世紀の人類学者たちは,人類進化史の初期には,親子間やキョウダイ間においても性交の許される乱婚や,1群の兄弟と1群の姉妹が交合しあう集団婚が存在したと考えた。しかし,現存の未開社会でこれらが制度として行われている例は見いだされず,とくに技術的に原始的とされる採集狩猟民の間ではむしろ一夫一婦制をとるものが多く,婚姻外の性的関係への規制が強く見られる。…
…同時にモーガンは,親族名称が過去または現在の婚姻様式の直接の反映だと考え,原初の乱婚の状態から,異世代婚が禁止され,兄弟姉妹同世代婚が行われた社会がマレー型名称を持つとした。さらにトラニア・ガノワニア型はプナルア婚punaluan marriage(妻の姉妹・夫の兄弟との自由婚)や対偶婚syndyasmian marriage(複数の兄弟姉妹集団間の集団婚group marriage)と対応し,一夫多妻婚を経て単婚家族にいたると名称体系もアーリア・セム型になるという一線的進化の仮説を提示した。モーガンの進化図式はその後厳しい批判にさらされることになったが,親族名称の科学的研究の基礎を築いたことは高く評価されている。…
※「集団婚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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