雨月(読み)うげつ

精選版 日本国語大辞典 「雨月」の意味・読み・例文・類語

う‐げつ【雨月】

[1] 〘名〙
① 雨と月。
謡曲・雨月(1470頃)「さては雨月のふたつを争ふ心なるべし」
② 陰暦八月一五日の夜、雨のために月が見えないこと。雨名月(あめめいげつ)。雨の月。月の雨。→無月(むげつ)。《季・秋》
新月(1947)〈渡辺水巴鵠沼旦暮「垣の外へ咲きて雨月の野菊かな」
[2] 謡曲。四番目物。各流。金春禅竹作。住吉明神参詣に来た西行一夜の宿を借りに庵を訪れると、翁(おきな)と姥(うば)が雨月の風趣優劣を争っている。翁は西行に歌を詠ませ、中へ招き入れる。やがて住吉明神がのり移った社人が現われ、舞を舞って西行を慰める。

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デジタル大辞泉 「雨月」の意味・読み・例文・類語

う‐げつ【雨月】

名月が雨で見られないこと。雨名月。雨の月。 秋》「くらがりに炭火たばしる―かな/波郷
陰暦5月の異称
[補説]曲名別項。→雨月

うげつ【雨月】[謡曲]

謡曲。四番目物金春禅竹こんぱるぜんちく作。西行が、雨と月とどちらがよいかで争う風雅な老夫婦の家に投宿した夜、和歌の徳により住吉明神があらわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雨月」の意味・わかりやすい解説

雨月
うげつ

能の曲目。四番目物。五流現行曲。金春禅竹(こんぱるぜんちく)の作とも、不明ともされる。清高閑寂の情緒だけを舞台に抽出したような曲。軒打つ雨音の風情と軒洩(も)る月光の美を論争する老夫婦(前シテとツレ)に、旅の西行(さいぎょう)(ワキ)を配し、秋の風情を描く前段と、住吉(すみよし)明神の神霊の乗り移った社人(しゃにん)(後シテ)が、西行を和歌の友としてたたえ、強く澄んだ舞を舞う後段。間狂言(あいきょうげん)は末社の神で、老夫婦が西行の参詣(さんけい)をうれしく思った住吉明神であったことを語る。紀貫之(きのつらゆき)の和歌の徳を描く世阿弥(ぜあみ)の『蟻通(ありどおし)』は暗い雨の夜の物とがめする蟻通明神の能であり、『雨月』は名月の夜を扱って、ともに能独自の表現の世界をみせている。

増田正造

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