雲母摺(読み)きらずり

改訂新版 世界大百科事典 「雲母摺」の意味・わかりやすい解説

雲母摺 (きらずり)

浮世絵版画の摺刷法の一種。人物画の背地に雲母うんも)の粉末を用いたもので,地の色により白雲母摺黒雲母摺,紅(べに)雲母摺などと呼ばれた。雲母粉を画面に定着させる方法に,(1)地の色と姫糊(あるいはにかわ)のための版木を2枚用意しそれらを摺り重ねた上に雲母をふりかける,(2)はじめから雲母粉を姫糊に混ぜて1枚の版木で摺る,(3)雲母摺を施す以外の部分を覆いにかわに混ぜた雲母を刷毛で引く,の3種類がある。寛政年間(1789-1801)を中心に行われ,とくに蔦屋重三郎版元とする歌麿の美人大首絵(おおくびえ)や写楽の役者大首絵に効果的に活用された。
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百科事典マイペディア 「雲母摺」の意味・わかりやすい解説

雲母摺【きらずり】

〈うんもずり〉とも。浮世絵版画技法一つ。雲母の粉(貝殻の粉で代用する場合が多い)を絵具に応用して摺ったり刷毛(はけ)でひいたりして余白をつぶしたもので,歌麿写楽大首絵などによく用いられている。
→関連項目東洲斎写楽

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雲母摺」の意味・わかりやすい解説

雲母摺
きらずり

浮世絵版画の摺(すり)の技法。雲母(うんも)粉を用いたものをいうが、多くは蛤(はまぐり)粉で代用させる。背景をつぶすいわゆる地潰(つぶ)しに多く使われ、地の色によって、白雲母(しろきら)(地色なし)、黒雲母(くろきら)(地色が黒)、紅雲母(べにきら)(地色が紅)の3種がある。1790年代(寛政期)前半に大流行をみ、なかでも、喜多川歌麿(うたまろ)の美人大首絵(おおくびえ)や東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)の役者大首絵の背景に用いられてその効果を高めている。まもなく贅沢(ぜいたく)品として禁止されたとみられるが、19世紀に入ってからもしばしば試みられている。

[浅野秀剛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雲母摺」の意味・わかりやすい解説

雲母摺
きらずり

浮世絵用語。錦絵の下地の摺りに用いる一技法。雲母板と呼ぶ同一の版を2つ作り,第1の版で下地の色を摺り,次に第2の版に糊をつけて摺り,その上に雲母粉をふりかける。また雲母粉に糊ないし明礬 (みょうばん) 水を混ぜて普通に摺ったり,簡略に雲母粉と膠 (にかわ) とを混ぜはけで塗ることもある。下地に墨を用いると黒雲母,紅のとき紅雲母,下地が無地だと白雲母と呼ぶ。雲母摺の作品は雲母絵ともいわれ東洲斎写楽,喜多川歌麿の版画にその傑作がみられる。

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