近年の著しい科学技術の進歩や社会経済の発展に伴い,電波利用はますます増大の傾向にあり,日本の無線局数は200万局を突破している。その利用分野も今日では放送,公衆通信をはじめ,運輸,漁業,気象,防災,治安,電力,アマチュアなど経済,国民生活のあらゆる分野にわたっており,現代社会の情報通信網の中核として電波は重要な役割を果たしている。この電波は空間を自由に飛び交い,国内はもちろん世界中に伝わっていく特性を有しているので,電波の発射を放任すると,相互に混じって受信されるなど電波の利用に混乱が生じる。また使用できる電波は物理的に有限であるので,多種多様な利用分野における電波の旺盛な需要にこたえていくためには,適切な周波数の分配計画を確立し(周波数割当),効率的な使用を図らなければならない。このため,電波の利用は国際的にも国内的にも厳格に規律していくことが必要となり,各国は国際電気通信連合憲章・条約を締結して電波を国際的に監理するとともに,国内的にはこの条約に基づいて電波法,放送法を制定して,電波監理を行っている。
電波監理は具体的には無線局の監理,規制という形で行われている。まず無線局(放送局を含む)を開設しようとする者は,国に対して免許申請を行うことが必要とされており,国はこの申請に対し,無線局開設の必要性,無線設備の技術基準への適合性などについて審査を行い,周波数や空中線電力を指定して免許を与える。無線局が開設された後においても,無線局が免許の際の技術基準や運用上の制限などを守って適正に運用されているかどうかを確認するため,国が定期的に検査を行うこととなっている。また発射されている電波の質が劣化していないか,無線局の免許を受けないで不法に電波を発射している者はいないかを絶えず監視して,電波の利用秩序の維持に努めている。さらに,電波の知識のない者が無線設備を操作して他の無線設備に妨害を与えることのないよう無線設備を操作するためには,その種別に応じ,一定の資格を要することを原則とし,このための無線従事者国家試験を行っている。このように無線局の免許,検査,電波監視などの無線局監督制度の運用や無線従事者の資格制度の採用によって電波監理が行われているが,この行政は電波監理行政と呼ばれ,日本では総務省電波監理局(現,電気通信局)の所掌となっている。
執筆者:三宅 忠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
電波の公平かつ能率的な利用を確保するための行政を電波監理という。電波は有限な資源であり、しかも広く伝わって相互に影響を与える性質があるため、その利用にあたっては基準を定め、これを守ることが必要である。総務省(地方では総合通信局等)が所管している。
電波監理の内容は、(1)限られた電波資源を有効、公平に無線局に割り当てること、(2)無線局の技術基準や運用基準を定めること、(3)技術基準や運用基準が守られているかどうかを監督すること、(4)無線従事者の免許を与えること、(5)電波の利用方法や安全性について調査研究を行うこと、などである。情報通信技術の進歩を適時に活用するための法制度見直しが進められており、電波監理の重点も変化しつつある。電波監理は国際電気通信連合憲章、国際電気通信連合条約、無線通信規則、電波法などの法令に従って行われ、国際的な計画・調整等は、国際電気通信連合(ITU)で行われている。
[笠井哲哉]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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