霞堤(読み)カスミテイ(英語表記)open levee

デジタル大辞泉 「霞堤」の意味・読み・例文・類語

かすみ‐てい【×霞堤】

河川に沿って堤防をところどころ切断し、上流側の端を外側に延長して重複させたもの。洪水時にはそこから遊水池に導き、本流水位を低下させる。

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精選版 日本国語大辞典 「霞堤」の意味・読み・例文・類語

かすみ‐てい【霞堤】

〘名〙 堤防が河川に沿って一線に続かないで、ところどころ切断され、そのある部分は重なって二重または三重の堤となっているもの。断続堤。つけながし。はごろも。

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百科事典マイペディア 「霞堤」の意味・わかりやすい解説

霞堤【かすみてい】

上流から下流に向かって〈ハ〉の字形に斜めに不連続に造った河川の堤防一つ。下流側を開放,次の堤防をその内側に造って,洪水時にはここから一部の水を人為的に氾濫(はんらん)させる。水位低下と遊水効果がある。急流河川に多く利用され,釜無川信玄堤は有名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「霞堤」の意味・わかりやすい解説

霞堤
かすみてい
open levee

河川堤防は,洪水から堤内 (河川工学では,堤防からみて河川の流れている地域を堤外,堤防で保護される居住地田畑などのある地域を堤内という) を守るために,連続的に築造されるのが普通であるが,堤防の下流端を解放し,次の堤防の上流端を堤内に延ばして上流側の堤防と重複して築造することがあり,これを霞堤と呼ぶ。おもに急流河川で用いられ,洪水を一時的にためて,洪水調節に使うことができる。

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世界大百科事典(旧版)内の霞堤の言及

【治水】より

… 秀吉が造った先述の淀川堤防の実態は明らかでないが,たぶん後にみるような連続堤ではなかったに違いない。農書,地方書に記されるところも,江戸時代前期には,耕地の一部への浸水を認める霞堤や二重堤であり,中期から長い連続堤を造っても,所々に増水が堤を越えて流れ込みうる低所をもった洗い堤(溢流堤)であった。堤外の耕地は流作場として石高も低く定められ,洪水の多い年には収穫をあきらめた。…

【堤防】より

…河川こう配の急な河川では,不連続になっている堤防において,上流側堤防の下流部と下流側堤防の上流部とを平行重複して築き,水位こう配の急なことを利用してその堤防の間で水を遊ばせて勢いを弱めたり,上流堤防が破堤しても下流堤防で水害を防ぐ方式のものが築かれている。これを霞(かすみ)堤といい,もともとは山梨県釜無川で武田信玄が編み出した治水工法といわれ,不連続の堤防群が折り重なって連なり,あたかも春霞のたなびくように見えたのでこの名がある。洪水の被害の激しかったところでは,幹川の堤防(本堤)よりも奥へ入ったところに副堤(控堤ともいう)をつくり,本堤が破堤しても被害を最小限におさえるための堤防とした事例もある。…

※「霞堤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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