非自治地域(読み)ひじちちいき(英語表記)non-self-governing territory

日本大百科全書(ニッポニカ) 「非自治地域」の意味・わかりやすい解説

非自治地域
ひじちちいき
non-self-governing territory

植民地のうち、第二次世界大戦後、信託統治地域にも、独立国にもなっていない地域。国際連合の定める国際信託統治制度のもとに置かれなかった地域のうち、国連脱植民地化特別委員会が非植民地化宣言の適用を受けるべきとして、総会に勧告した地域をさす。脱植民地化特別委員会は非自治地域の状況を毎年調査し、非自治地域リストUnited Nations list of Non-Self-Governing Territoriesを更新している。国連憲章第11章の「非自治地域に関する宣言」では、人民がまだ完全に自治を達成していない地域の施政を行う責任を有し、または引き受ける国際連合加盟国は、「この地域の住民の利益が至上のものである」という原則を承認し、かつ、この地域の住民の福祉を増進する義務を「神聖な信託として受託する」と規定している。

 1946年に国連加盟8か国(アメリカ、イギリスオーストラリアオランダベルギーデンマークニュージーランド、フランス)が明らかにした非自治地域は72地域であったが、2014年3月の時点では16地域(施政国は4か国)に減少している。リストにある16の地域は以下のとおりである(カッコ内は施政国)。アメリカ領サモア(アメリカ)、アメリカ領バージン諸島(アメリカ)、アンギラ(イギリス)、イギリス領バージン諸島(イギリス)、グアム(アメリカ)、ケイマン諸島(イギリス)、ジブラルタル(イギリス)、セントヘレナ(イギリス)、タークス・カイコス諸島(イギリス)、トケラウ(ニュージーランド)、西サハラ(1990年にスペイン施政下を離脱)、ニュー・カレドニア(フランス)、バーミューダ(イギリス)、ピトケアン諸島(イギリス)、フォークランド諸島(イギリス)、モントセラト(イギリス)。

 このうち、ニュー・カレドニアは2014年以降に独立に関する住民投票を行う予定で、グアムについては、グアム政府の脱植民地化委員会が2015年に独立に関する政治的な立場を決めるための住民投票を実施する予定である。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「非自治地域」の意味・わかりやすい解説

非自治地域 (ひじちちいき)
non-self-governing territory

国際連合憲章は〈人民がまだ完全には自治を行うに至っていない地域〉を〈非自治地域〉とする(73条)が,これは,俗に〈植民地〉〈属領〉などと呼ばれる地域である。信託統治のもとにおかれた非自治地域は,限られていた。そこで,その他の非自治地域のために設けられたのが,国連憲章第11章〈非自治地域に関する宣言〉である。第11章の採択は,非自治地域を施政する国家の国際的な責任の原則を確立する過程での里程標と評価される。この第11章によって,非自治地域を施政する国連加盟国は,住民の利益が至上のものであるという原則を承認し,彼らの福祉を最高度まで増進する義務を神聖な信託として受諾した。そして,自治を発達させ,自由な政治制度の発達を援助することを約束した(73条b号)。この約束は,規定の性格の明確さと範囲の広さにおいて,従来の国際協定の及ぶところではない。たとえば国際連盟規約23条(ロ)号では,連盟加盟国は,自国の管理に属する地域内の住民に対し公正な待遇を確保することを約束しただけであった。

 非自治地域を施政する国連加盟国は,これら地域についての定期情報を事務総長に送付しなければならない(73条e号)。スペインおよびポルトガルは,1955年,国連に加盟したが,両国とも,非自治地域を施政しないと,当初,主張した。結局,スペインが情報送付に同意したのに対し,ポルトガルは拒否し続けたので,60年,国連総会は,アンゴラ,モザンビーク,マカオなどを非自治地域とみなす決議を採択した。同年,総会は,植民地独立付与宣言をも採択した。これは非自治地域に関する国連の新しい役割の始まりを示したが,同宣言を履行するため,幅広い責任をもつ特別委員会が,翌61年に設立された。以来,同委員会は,非植民地化問題を処理する国連の中心機関となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「非自治地域」の意味・わかりやすい解説

非自治地域
ひじちちいき
non-self-governing territory

国際連合憲章第 11章にいう「人民がまだ完全には自治を行うにいたっていない地域」のこと。植民地,属領といわれる地域が該当する。同憲章は「非自治地域に関する宣言」を設けて,(1) 人民の進歩の段階に応じて自治を発達させること,(2) 地域の経済的・社会的・教育的状態に関する情報を事務総長に提供することなどを,統治する加盟国に義務づけている。

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世界大百科事典(旧版)内の非自治地域の言及

【国際連合】より

…(1)植民地問題 国連は発足当初予想もされなかった積極さをもって,この課題と取り組んでいる。国連憲章は植民地を〈信託統治地域〉と〈非自治地域〉の二つのカテゴリーに分け,それぞれ異なる制度の下に置いた。このうち前者は,(a)連盟時代の委任統治地域,(b)敵国から分離された地域,(c)加盟国が自発的に信託統治制度の下に置く地域で,戦後11の地域がこの特殊な制度の下に置かれた。…

※「非自治地域」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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