線形動物門双器綱鞭虫科に属する寄生虫。世界的に分布し、日本にもみられる。ヒトの盲腸に寄生し、体はその名のとおり鞭(むち)状で、細長い糸状の体前部を宿主の腸粘膜内へ挿入している。雄の体長3~4.5センチメートル、雌3.5~5センチメートル。卵は褐色で両端に栓があり、糞便(ふんべん)とともに排出される。外界で卵殻内の卵細胞が分裂して幼虫に発育するが孵化(ふか)しない。ヒトがこのような含幼虫卵を経口的に摂取すれば、消化管内で幼虫が孵化し発育したのち、盲腸で成虫となる。少数寄生ではほとんど無症状であるが、多数寄生すれば下痢、腹痛などをおこす。なお、ヒトの鞭虫のほかに、イヌに寄生するイヌ鞭虫T. vulpis、反芻(はんすう)動物に寄生するヒツジ鞭虫T. ovisなどが知られている。
[町田昌昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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