n個の異なるものからr個を取り出して1列に並べたものをn個からr個とる順列といい、その総数をnPrと書く(Pは、順列の英語permutationの頭文字をとったもの)。たとえば、4個の文字A、B、C、Dから3個をとって並べると、次のような24通りの順列ができる。したがって、4P3=24である。
ABC ABD ACB ACD ADB ADC
BAC BAD BCA BCD BDA BDC
CAB CAD CBA CBD CDA CDB
DAB DAC DBA DBC DCA DCB
順列は、 のような樹形図を書くと考えやすい。一般に「二つの事柄A、Bがあって、Aのおこり方がm通りあり、そのおのおのに対して、Bのおこり方がn通りずつあれば、AとBが引き続いておこる場合の数はm×nである」が成り立つ。これを積の法則というが、このことから によって容易にわかるように4P3=4×3×2が得られ、一般に
となる。この式の右辺は、
と変形できるから、階乗!を用いると、
と表される。とくにn個からn個とる順列、すなわち、n個の異なるものを1列に並べてできる順列の総数はnPn=n!である。
n個の異なるものからr個を取り出してできる各組を、n個からr個とる組合せといい、その総数をnCrまたは
と書く(Cは、組合せの英語combinationの頭文字をとったもの)。これは順列において順序を考えに入れない場合である。たとえば、4個の文字A、B、C、Dから3個をとってできる組合せは
{A, B, C},{A, C, D},{A, B, D},{B, C, D}
の4通りである。したがって4C3=4である。この値は次のように4P3からも求められる。4P3個の順列のなかには、組合せとして同じものが3P3=3!=6個ずつ含まれている。したがって4P3=3!4C3ゆえに
4C3=4P3/3!=24/6=4
一般に、nPr=n!nCrが成り立ち、
この式でr=0とすれば、形式的に
が得られる。nCrはn個の要素からできている集合の部分集合でr個の要素をもつものの総数に等しい。nC0はそれらの部分集合のなかの「要素をもたないもの」すなわち空集合を1個と数えたことに相当する。
[植竹恒男]
1枚の硬貨を6回投げるとき、表が2回だけ出る場合は何通りあるか考えてみよう。1、2、……、6回目に出た結果を のように書き入れていくと、これらの六つの枠のうちから二つを選んで「表」と記入し、残りは「裏」とすれば、条件に適する組合せが一つできる。よって、求める場合の数は6C2=(6・5)/2!=15となる。この問題は、六つの枠から四つを選んで「裏」と記入し、残りを「表」と考えて、6C4=(6・5・4・3)/4!=15としても解ける。同様に考えて、一般に
nCr=nCn-r
が成り立つ。また、次の等式も成り立つ。
n-1Cr+n-1Cr-1=nCr
のように、この関係を利用してnCrの値を順次求めていくのがパスカルの三角形である。
[植竹恒男]
A、B、C、Dの4人が丸テーブルに着席する仕方は全部で何通りあるだろうか。この場合は のように、4人が一つずつ順送りに位置を変えてできる四つの並び方はすべて同じものとみられる。 のように、一番上から始めて時計と逆回りにとった四つの順列をABCD, DABC, CDAB, BCDAで表す。4人が1列に並ぶ順列の数4!=24のなかには、このような意味で「同じ」順列が四つずつあるから、求める場合の数は4!/4=3!=6となる。一般に、n人が丸テーブルに着席する仕方は全部でn!/n=(n-1)!通りある。また、n人からr人を選んでこのように並ぶ仕方は全部でnPr/r通りある。このような順列を円順列という。n個の玉で数珠(じゅず)やネックレスをつくる場合は、さらに を裏返しにしたものも「同じ」とみなされるから、円順列の数の半分になる。このような順列を数珠順列とよぶ。
4個の文字A、B、C、Dから3個の文字を取り出して並べる場合、同じ文字を何回使ってもよいとすれば、どの文字についても4通りの選び方があるから、全部で4×4×4=43=64通りあることになる。一般に、n個の異なるものから同じものを重複してとることを許してr個とる順列を重複順列(ちょうふくじゅんれつ)といい、その総数はnrとなる。
[植竹恒男]
『C・L・リウ著、伊理正夫他訳『組合せ数学入門Ⅰ』(1972・共立全書)』
n個の互いに区別のつくものからr個取って,ある順序に並べたものを順列という。そのような並べ方,すなわちn個のものからr個を取った順列が全部でいくとおりあるかは,=n(n-1)……(n-r+1)で与えられる。また,異なるn個のものからr個を取り出し順序は考えないとき,それを組合せという。n個からr個を取る組合せの数はnCrまたはで表され,
である。例えば,10人の人から4人を選んで一列に並べる順列の数は,10P4=10・9・8・7=5040であり,6チームで,各2チームが1回ずつ対戦するリーグ戦を行うとき,試合数はである。
nCrについて次のような等式が成り立つ。
(1)nCr=nCn-r
(2)nCr=n-1Cr-1+n-1Cr
(1)は,n個のものの中からr個を取り出す各組合せと,n個のものの中からそのr個を取りのぞいた残りのn-r個の組合せとが1対1に対応することに相当する。(2)は,n個のものからr個を取る組合せの数は,そのうち特定の1個を含む組合せの数n-1Cr-1と,特定の1個を含まない組合せの数n-1Crの和に等しいということに相当する。
n個の相異なるものから重複を許してr個取り出して並べる順列を重複順列という。この重複順列の数は,nrである。また,n個の相異なるものから重複を許して,r個取る組合せを重複組合せという。その数はnHrで表され,nHr=n+r-1Crである。nHrはn変数の単項式のうち次数がrであるものの数と一致する。例えば3変数x,y,zの三次の単項式は全部で,x3,y3,z3,x2y,x2z,xy2,y2z,xz2,yz2,xyzの10個であるが,これは3H3=5C3=10と計算することができる。また,rが一つの自然数であるとき,z1+z2+……+zn=rの負でない整数の解(z1,z2,……,zn)の数はnHrである。
p個のミカン,q個のリンゴ,r個のメロン,全部合わせてn=p+q+r個の果物を一列に並べるしかたは,n!/(p!q!r!)とおりである。この順列の数は,(x+y+z)nを展開したときのxpyqzrの係数に等しい。もっと多くの種類のあるときも同様である。
4個のものを四つの場所におく方法は,4!=24とおりであるが,いま,この四つのものを円周に沿って並べる場合,例えば次のような四つの順列は,
A,B,C,Dの順序関係は同一であるので同一のものと考えることにすれば,4個のうちのどれか一つ,例えばAの場所を決めておき,残りの三つの並べ方を考えればよいから,この順列の数は(4-1)!=6である。このような順列を円順列という。n個のものからr個取って円周上に並べる円順列の数は,
n個の異なった玉からr個を取ってじゅずを作るとき,玉の並べ方の数は,円順列の半分,で与えられる。じゅずを裏返したとき,同一円順列となるものは同じじゅずだと考えられるからである。ただし,r=1,2のときは特別で,それぞれとなる。
執筆者:杉江 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…また同じころ,イギリスのJ.グラウントによる生命表の作成などの統計的研究も確率論の発生を促したとされる。次いで18世紀に入り,ヤコブ・ベルヌーイの遺稿が,甥のニコラウスによってまとめられ,《推測法》(1713)として出版されたが,そこには順列,組合せを用いた確率の話が出てきて,しだいに確率論としての形態を整えてきたのであった。 ここでも創生期のように有限個の事象を扱った確率から話を始める。…
※「順列組合せ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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