精選版 日本国語大辞典 「頚」の意味・読み・例文・類語
くび【首・頸】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 脊椎動物の頭と胴をつなぐ細くなっている部分。哺乳類や鳥類ではよく発達しているが、爬虫類以下の動物では、はっきりと分化していない。人間などの多くの哺乳類では七個の頸椎(けいつい)によって支持されているが、鳥類や爬虫類では種によって大きく異なる。広義には、生物の頭部とそれ以外の部分を隔てている部分をさす。頸部(けいぶ)。
- ② 物の、①に似た形。また、該当する部分。
- ③ ( 領・襟 ) 衣服の、①をおおう部分。えり。
- [初出の実例]「其の襟(きぬのクビ)を取りて引き堕して」(出典:日本書紀(720)天武元年六月(北野本訓))
- ④ ①を含めて、そこから上の部分。あたま。
- [初出の実例]「いとおほきにて、くびもすくよかなり。白き絹に柑子をつつめるやうに見えて、いと白くうつくしげなり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
- ⑤ ( 首を切られるの意から )
- ⑥ 顔。容貌。また、よい顔、美貌、あるいはそのような人。美人。
- [初出の実例]「かかる所には看板の首(クビ)といふものありて、よい顔を門口のきっはしへ出してまねかすれば」(出典:洒落本・浪花色八卦(1757)花菱卦)
- ⑦ 遊女または茶屋女をさしていう語。
- [初出の実例]「『林沖さん花おしゃうさん。きついおみかぎりでこまります』『きのわるいくびだぞ。ちくしゃうめ』」(出典:洒落本・通気粋語伝(1789)上)
- ⑧ 見る目、嗅ぐ鼻だけの二つの頭部をもった鬼。地獄で、亡者の生前の善悪の業の一切を閻魔に告げ、罪の軽重を判定させるという。
- [初出の実例]「地ごくても目あかしをする首二つ」(出典:雑俳・柳多留‐二(1767))
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 衣服など、身につけるものを数える時に用いる。
- [初出の実例]「水早 一頸、絹一丈五尺代」(出典:高野山文書‐文治元年(1185)一一月九日・阿氐河庄年貢送文案)