額安寺(読み)がくあんじ

精選版 日本国語大辞典 「額安寺」の意味・読み・例文・類語

がくあん‐じ【額安寺】

  1. 奈良県大和郡山市額田部寺町(ぬかたべてらまち)にある真言律宗の寺。山号は熊凝(くまごり)山。聖徳太子創建の熊凝精舎(くまのこりしょうじゃ)の旧跡に、道慈が額田氏の氏寺として建立。鎌倉時代まで栄えたが現在は本堂を残すのみ。国宝の額田寺伽藍並条里図をはじめ多くの重要文化財を蔵する。額田寺(ぬかたでら)。額寺。熊凝寺(くまごりでら)

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日本歴史地名大系 「額安寺」の解説

額安寺
かくあんじ

[現在地名]大和郡山市額田部寺町

額田部ぬかたべの南西部にある。古名は額田がくでん寺、略して「額寺」とみえる。熊凝山と号し、真言律宗。本尊は十一面観音。天平宝字(七五七―七六五)頃の額安寺班田図(国立歴史民俗博物館蔵)によると、寺地は平群へぐり郡九条三里三五坪・三六坪、一〇条四里一坪・二坪・一一坪・一二坪の六町を占めており、西半は主要伽藍、東半は雑舎の院となっている。主要伽藍は一坪に八段三三二歩、二坪に九段二三五歩、一一坪に九段二七四歩、一二坪に「九段歩」で、合わせて三町七段余となり、東方の雑舎の院の広さは三五・三六坪に一町三段三一四歩で、寺地は東西三町・南北二町を占めたと考えられる。中央に金堂、その前面に中門、さらにその前方に南大門を、中門と南大門との間、回廊外南東方に三重塔を、金堂の北に講堂を、金堂の東北方と講堂の後方両側に僧房らしいものを記し、これらをめぐって大垣とを示している。

〈大和・紀伊寺院神社大事典〉

〔熊凝道場・額田寺〕

当寺と大安だいあん(現奈良市)の前身である熊凝くまごり道場(熊凝寺)を結び付ける伝承がある。天平一九年(七四七)大安寺伽藍縁起并流記資財帳によると、推古天皇が田村皇子をして飽浪あくなみ葦垣あしがき(現奈良県斑鳩町)に病臥している厩戸皇子を見舞わせたところ、厩戸皇子は熊凝くまごり村道場を公的には大寺として営造しようと望んで朝廷に譲り献じ、私的には永く伝えようとして田村皇子に付嘱させた。のち推古天皇は死去する日、「この寺を後世に流伝せよ」との詔を残し、舒明天皇はその一一年二月に百済くだら川の傍らに子部こべ(現奈良県橿原市)を切開いて寺を建立した。これが百済大寺(現同上)であると記される。「三代実録」元慶四年(八八〇)一〇月二〇日条には、大安寺の奏状の文を引いて、「昔日、聖徳太子創建平群郡熊凝道場、飛鳥岡本(舒明)天皇遷建十市郡百済川辺」とあって、熊凝道場は平群郡にあったとしている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「額安寺」の意味・わかりやすい解説

額安寺
がくあんじ

奈良県大和郡山(やまとこおりやま)市額田部(ぬかたべ)寺町にある寺。真言律宗に属する。617年(推古天皇25)に聖徳太子の発願によって創建された熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)が、639年(舒明天皇11)に百済(くだら)川のほとりに移転されたのが現在の大安寺(たいあんじ)にあたる。熊凝精舎の移転後の旧地に建立されたのが当寺で、道慈(どうじ)律師の創建と伝えられる。額安寺の名称は、推古(すいこ)天皇の額(ひたい)に悪瘡(あくそう)ができたので、薬師如来(にょらい)像をつくって祈願したところ全快したことに由来していると伝えられている。その後、西大寺忍性(にんしょう)が再興したが、永享(えいきょう)年間(1429~41)に堂宇が焼失して以来荒廃し、現在に至っている。寺宝の額田寺伽藍並条里図は国宝。

[眞柴弘宗]

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改訂新版 世界大百科事典 「額安寺」の意味・わかりやすい解説

額安寺 (がくあんじ)

奈良県大和郡山市にある真言律宗の寺。一名額田(ぬかた)寺ともいう。聖徳太子創建の熊凝(くまごり)寺の後身というが明らかでない。この地に繁衍(はんえん)した額田氏の氏寺で,出土瓦よりみて創建は飛鳥時代末期と思われる。8世紀に入唐留学僧道慈により寺観の整備がすすみ,鎌倉時代には西大寺の叡尊により中興されたが,室町時代の兵火,豊臣秀吉による大塔の四天王寺移建などで寺運は衰退した。多くの寺宝がある。
額田寺伽藍幷条里図
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世界大百科事典(旧版)内の額安寺の言及

【額田寺伽藍幷条里図】より

額安寺(がくあんじ)に伝来,現在国立歴史民俗博物館所蔵。奈良末期の天平宝字年間(757‐765),または少し後の作成。…

※「額安寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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