顎部(がくぶ)の突出程度を横顔からみて表した角度。各進化段階にある人類の横顔をみると、顎部が前突している突顎から、口元がほとんど突出していない直顎まで、さまざまなものがある。そこで、18世紀後半にオランダの解剖学者カンペールPieter Camper(1722―89)が、人種の差異を示す標識の一つとして考案した。それは、横顔からみて、眉間(みけん)から鼻の下で鼻中隔の付け根を結ぶ直線と、同じく鼻中隔の付け根と耳の穴とを結ぶ直線との間の角度である。彼は、世界各地の諸人種が群れ集うオランダのアムステルダム港で、多くの人々についてこの角度を計測し、また、古代の絵画に描かれている人物の横顔についても計測した。その結果、黒人の顔面角は白人のそれより小さく、猿類に似ていると主張した。この観察は一般には理解しやすいため、多くの人種論に引用された。しかし、この考え方は、各人種と各種霊長類を単純に一直線上に並べたにすぎず、その数字の意味するところを考えず、また誇張して人種差別に結び付けるきらいがある。そのため今日の人類学者は、ただ頭骨の形態を記述する項目としてのみ用いる。顔面角を測る方法としては、上述の他に全側面角、鼻側面角、歯槽側面角などが考案されている。
[香原志勢]
口吻部の突出や傾斜を表すために,側方から見た顔面の輪郭線上で計られるいくつかの角度である。基準面となる耳眼平面は左右の外耳孔上縁点ポリオン(生体では耳珠の上縁トラギオン)と左側の眼窩入口の最低点オルビターレによって決定される。たとえば全側面角は,前頭骨と鼻骨の境界点ナジオンと上顎歯槽の最前下点プロスティオンとを結ぶ直線が耳眼平面となす角を全側面角という。その大きさによって,過突顎(70°未満),突顎(70.0°~79.9°),中顎(80.0°~84.9°),正顎(85.0°~92.9°),過正顎(93.0°以上)に分類する。各地の集団によって角度が違う傾向があり,突顎はアフリカ黒人,オセアニアの集団,アボリジニに,中顎はインド人,東アジア人,エジプト人に,中顎と正顎の間は中央アジアの蒙古族に,正顎はヨーロッパ人に見られることが多い。生体の顔面角は上顔面角または側面角といい,頭蓋骨と同様に測定する。ヒトの顔面角をはじめて測定したのはオランダの医師カンペルP.Camper(1722-89)である。なお,人種による顔面角の違いが人種差別に悪用されることがあるので,そのようなことのないよう取り扱いに注意する必要がある。
執筆者:河内 まき子+馬場 悠男
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…平面上の直線lによって二分される平面の部分のおのおのをl上の点も含めて半平面といい,lをその境界という。空間内に直線lを境界とする二つの半平面があるとき,空間はこれらの半平面により二分されるが,これらの部分のおのおのを半平面上の点も含めて二面角といい,lをその辺,二つの半平面をその面という。二面角をその辺に垂直な平面で切るとき,切口としてあらわれる角の大きさは,平面のとり方によらず一定である。この角の大きさを二面角の大きさという(図1)。…
…人体測定法は生体計測,頭蓋および骨格計測に分けられる。 生体計測は原則として直立位で,頭部は耳眼平面(顔面角)に水平に位置づけて行う。身長は床面より頭部正中面の最高点(ベルテックスVertex)までの垂直距離である。…
※「顔面角」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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